セクハラやじ 問われる都議会の決意


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 世間が騒ぐから取りあえず再発防止を決議しておこう。東京都議会がセクハラやじ問題をめぐり、賛成多数で可決した「信頼回復に関する決議」や一連の対応からは、社会に背を向け続けるそんな都議会の姿しか見えてこない。

 塩村文夏都議に対し、鈴木章浩都議が浴びせた「早く結婚すればいい」とのやじは、明らかに人権侵害である。にもかかわらず、決議はそれを「人権侵害と言われかねない不規則発言」と片付けている。つまり「人権侵害ではない」との認識である。
 議会人は人権侵害に対してより敏感であるべきだ。「言われかねない」との文言からは、議会人に求められる人権感覚のかけらさえ感じられない。これでは決議にある再発防止は望めない。
 国内外から大きな批判を浴びたセクハラやじの内包する問題の重大さへの認識が、決議には決定的に欠けている。信頼回復どころか、都議会に自浄能力がないことを露呈しただけの決議でしかない。
 問題は決議内容だけにとどまらない。塩村都議は、鈴木都議以外の議員から「産めないのか」「まずは自分が産めよ」などのやじもあったとして、発言者に名乗り出るよう訴えていた。
 だが、自民は名乗り出る都議がいないことをいいことに、その他のやじをなかったことにして、鈴木都議以外の発言者を特定するよう求める決議案を否決した。音声も残っていて、そのやじがテレビなどで繰り返し流されているのにである。
 鈴木都議以外にもセクハラやじを飛ばした議員がいたことは確実だが、頬かぶりしていれば許される状況は明らかにおかしい。悪質な人権侵害のやじを放置したままでは根本的な解決にはならない。
 都議会がこの問題でまずなすべきことは何か。問題になっているやじが人権侵害であるとの認識を議員全員で共有すること、セクハラやじ発言者全てを特定し、鈴木都議と合わせて何らかの処分を検討することである。
 その上で、都議会の信頼回復と再発防止に努めることを決意するのでなければ、信頼回復など程遠い。問題をうやむやにしたままでは、不信感を増幅するだけである。
 人権侵害の根絶に乗り出すかどうか。都議会の決意が問われている。