がん通院宿泊割引 離島患者に幅広い支援を


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 沖縄本島で放射線治療を受ける離島・へき地のがん患者を対象にした宿泊費割引制度が7月1日から始まる。県と県ホテル旅館生活衛生同業組合が締結した「離島へき地のがん患者等の宿泊支援に関する協定」を受け、組合加盟40施設で宿泊費の20~40%を割り引く。同行が必要な患者は付添人も割引対象になる。

 離島のがん患者が治療を受けるには、本島もしくは県外に行くしか選択肢はない。離島のがん患者が望んできた経済的負担の軽減につながる制度創設を歓迎したい。
 県内で放射線治療を実施しているのは本島中南部の7カ所の医療機関だけである。県は割引対象となるがん患者は宮古と八重山地域だけでも140人と試算している。他の離島を含めれば、さらに多くのがん患者が宿泊費割引制度の恩恵を受けることになる。
 だが、裏を返せば治療費に加え、渡航費や宿泊費の重い負担を強いられるがん患者がこれだけいるということである。経済的理由から治療を諦める患者もいるという。精神的な負担の大きさは容易に想像がつく。
 このような医療格差はあってはならない。離島県沖縄ならば、なおさらのことである。全ての県民が適切な医療を受けられることは当然の権利である。
 離島という地理的条件は変えることはできない。だが、行政や民間の力で患者負担を軽減し、離島のハンディを小さくしていくことはできる。
 徐々にではあるが、そのような動きが出てきている。がん患者らの渡航費については回数制限はあるものの、石垣市は1回往復1万円もしくは実費、宮古島市もほぼ同様の助成を実施している。
 沖縄電力グループ百添会は安価で利用できる入院患者の付き添い家族用滞在施設「がじゅまるの家」を県立南部医療センター・こども医療センター隣接地に建設し、県へ寄贈した。2013年度は離島2084人、県外1612人など計4096人が利用している。
 しかし、これで十分というわけではない。行政による渡航費の助成を多くの離島に広げたい。企業、団体の支援もさらに必要だ。官民一体となって幅広い、充実した支援を実施し、離島のがん患者が安心して治療に専念できる環境を整えたい。