閣議決定最終案 「戦争できる国」は許さない


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 平和国家を歩んできた日本の国の形を変える閣議決定が秒読みに入った。政府が集団的自衛権行使を可能とする憲法解釈変更に向けた閣議決定最終案をまとめた。国民不在の性急な政策決定に正当性を見いだすことなどできない。

 最終案では「わが国と密接な関係にある他国」に対して武力攻撃があった場合に「国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」があれば集団的自衛権行使は憲法上許されるとしている。
 9回を数えた与党協議の大半は、集団的自衛権行使容認を前提とした事例の検討や閣議決定案の文言をめぐる調整に費やされている。法解釈の議論というよりは、公明党が合意できる表現を探すための「言葉遊び」の側面が強い。公明党の山口那津男代表は「個別的自衛権に匹敵するような集団的自衛権であれば、一部限定的に容認」との立場を示し、これまでの姿勢を転換した。「平和の党」として、果たして説明がつくのだろうか。
 憲法の基本原理の平和主義を具体化したのが戦争放棄、戦力不保持を掲げた9条だ。このため政府は自国への攻撃がないのに武力を使う集団的自衛権の行使を一貫して禁じるとの姿勢を貫いてきた。それを180度転換する重大な国策決定をこれほどまでに拙速に進めていいはずがない。
 最終案は集団的自衛権行使容認だけでなく、「集団安全保障」の武力行使への自衛隊参加にも含みを残している。戦後、長らく日本の安全保障政策の根幹をなしていた「専守防衛」という方針の破棄を意味する。「他国に軍事力を行使しない国」としての国際的信用もかなぐり捨てることになる。
 自民党政権だった2004年、憲法解釈の変更に関する閣議決定の答弁書にはこう書かれている。「政府が自由に解釈を変更できる性質のものではない」「意図的に変更すれば、政府の憲法解釈ひいては憲法規範そのものへの国民の信頼が損なわれかねない」。安倍晋三首相はこの答弁書をどう受け止めるのか。
 今年の「慰霊の日」に県内で開かれた慰霊祭では、あいさつに立った遺族らが「再び『戦争』できる国になる」と集団的自衛権行使容認の政府の動きに強い懸念を示した。沖縄は住民を巻き込んだ国内唯一の地上戦を経験した。日本が再び戦争ができる国になる動きを許すことはできない。