情報監視審査会 秘密法廃止含め再議論を


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 特定秘密保護法の運用をチェックする「情報監視審査会」が、12月に予定される同法施行と共に発足することになった。強制力を持たない機関であり、政府の秘密指定を監視できるのか甚だ疑問だ。

 同審査会を衆参両院に新設するとした改正国会法は、通常国会の閉幕直前に与党とみんなの党の賛成多数で可決、成立した。与党側が閉幕前の「駆け込み成立」を図り、抵抗する野党を数の力で押し切った。だがその内容には大いに問題がある。
 衆参両院に常設される審査会はいずれも8議員で構成する。だが会派の議席数に応じて配分されるから、政府を支える与党が多数を占めることになる。これでは監視機関どころか、政府の秘密指定の「追認機関」と化す恐れもある。
 権能にも問題が多い。審査会は、非公開の秘密会で政府から秘密保護法の運用状況の報告を受け、必要に応じて特定秘密の提出を要求できる。だが法的拘束力はない。行政機関が「安全保障に著しい影響を及ぼす」などと提出を拒んだ場合、内閣に対して非開示理由の声明を出すよう求めることができる、としているだけだ。
 政府の秘密指定が不適切と判断した場合は、指定解除を勧告でき、政府から国会の各委員会への秘密提出についても勧告権を持つが、これも強制力はない。監視機能の実効性を疑問視する声が強いのは当然で、野党側は「国会が監視したふりをする法律」(海江田万里民主党代表)などと指摘した。
 特定秘密保護法は、防衛や外交、治安に関する幅広い情報を政府が特定秘密に指定できる。時の政権が自らに都合の悪い情報を特定秘密に指定し、情報を隠蔽(いんぺい)する恐れが大きく、国民の知る権利や報道の自由を侵害する懸念は消えない。
 秘密保護法では、特定秘密を取り扱う職員が不適切な指定を告発した場合、身分を守られるどころか、「秘密の漏えい」に当たるとして罰則対象になる。40万件に上る特定秘密から、問題を見つけるためには内部告発は有力な手段となるはずだが、今回の改正国会法には、こうした内部通報者を守り、訴えを受け止める仕組みも盛り込まれていない。
 強制力もなく、内部通報を守る規定もない法律では、政府の恣意(しい)的な秘密指定を監視する機能は到底期待できない。国会は秘密保護法と改正国会法の両方の廃止を含めて議論をし直すべきだ。