教員の多忙 負担減で学びの場充実を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 経済協力開発機構(OECD)が中学校を対象に実施した国際教員指導環境調査によると、1週間の仕事時間は日本が53・9時間で、参加した34カ国・地域の中で最も長いことが分かった。参加国の平均は38・3時間で、「日本の教員の多忙」が裏付けられた。

 本調査は、事務業務や部活動の指導に精力を削(そ)がれる教員の実像を浮き彫りにした。授業に関する時間は参加国平均(26・4時間)と同じだが、一般的な事務業務は5・5時間(参加国平均2・9時間)、部活動など課外活動の指導は7・7時間(同2・1時間)に上っている。
 文部科学省は「事務職員を増やすなどして教員の負担を減らし、教育に集中できる環境を整えたい」との姿勢を示している。教育評論家の尾木直樹法政大教授も「一義的には教員の増員が不可欠」と指摘している。人員増による教育現場の環境改善を図るためには、所要の教育予算の確保が必要となる。
 ところが、日本の教育予算は先進国の中でも乏しい。OECDが発表した2010年の加盟各国の国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出割合によると、OECD平均は5・4%であるのに対し日本は3・6%で、比較可能な加盟30カ国中、4年連続の最下位だった。これでは教育環境の改善は望めない。他の先進国並みの教育予算の確保が急がれる。
 業務のスリム化も必要だ。学校管理のため教員に課せられた報告業務の見直しを進めるべきだ。部活動指導も地域の人材活用を推進し、教員の負担を軽減するべきだ。教員が授業以外の事務や部活動指導に追われ、生徒と向き合えないのでは本末転倒である。
 本県の現状も厳しい。沖縄県教職員組合が実施した教職員の勤務実態調査では、9割以上の教員が多忙な業務で心身疲労を来していることが分かっている。事務処理の多さ、過剰な部活動指導、学力向上対策に関する業務が教員を圧迫している。教職員全体に占める病休、精神疾患の割合は全国最悪だ。教員の負担軽減は待ったなしである。
 教員に過度な業務を強いる教育行政のひずみは、結果として児童生徒へのしわ寄せとなる。教員が時間をかけて児童生徒と向き合い、学びの場を充実するためにも、負担軽減が不可欠である。教育予算の充実、業務見直し、地域との連携を網羅した抜本策を求めたい。