海兵隊豪州移駐 沖縄駐留は正当化できない


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 描かれている物が何かを示されなくとも、パズルのピースを少しずつ埋め合わせていくと輪郭が浮かぶ。米海兵隊をめぐる最近の動きをパズルに例えるなら、沖縄への駐留根拠の薄弱さという実像がくっきりと浮かび上がってくる。

 米軍の準機関紙・星条旗などによると、米軍が、在沖海兵隊員約2500人が移駐する予定のオーストラリア(豪州)で、駐留規模をさらに拡大する可能性が濃厚になっている。
 「アジア太平洋重視」を掲げるオバマ政権の下、米軍は、アジア諸国との軍事交流を活発化させている。軍事力を高める中国を過度に刺激することを避けつつ、アジア諸国との軍事的連携を密にしながら、遠巻きに中国へのにらみを利かす戦略にシフトしている。
 在沖米軍基地については、中国のミサイルの射程内であることを挙げ、米の軍事専門家から「中国に近過ぎて脆弱(ぜいじゃく)だ」との指摘が再三繰り出されている。こうした懸念に対処するため、海兵隊は豪州、グアム、ハワイなどへの分散配置を進めている。
 注目すべきは、米豪の協定により、2018年までに海兵隊員を運ぶ海軍の強襲揚陸艦が豪州に配備されることだ。紛争が起きた際、千人以上の海兵隊員を乗せて機動展開する行動拠点が、アジア太平洋地域で沖縄に次いで確保される意味は重い。
 在沖海兵隊をめぐっては、米軍再編を仕切り直した2012年の日米合意で地殻変動が起きた。主力歩兵部隊の第3師団第4連隊のグアム移転が決まり、後方支援部隊もグアム、ハワイに分散し、機動部隊2500人が豪州にローテーション配備される。約9千人の実戦部隊が去り、沖縄には太平洋上を巡回している第31海兵遠征部隊と司令部が残る構図となる。
 紛争時の主力となる歩兵部隊がほぼ空っぽになり、航空機やヘリに乗せる兵員が大幅に減るにもかかわらず、普天間飛行場の代替新基地を名護市辺野古に建設することは、論理的矛盾も甚だしい。
 米国の対アジア政策に影響力を持つジョセフ・ナイ元国防次官補が豪州移転を提言し、米識者には米本国への撤収を説く見解もある。
 豪州への配備拡大をみても、地政学や軍事的合理性を前面に据えて海兵隊の沖縄駐留を正当化するには無理がある。辺野古新基地建設の愚を犯してはならない。