給付型奨学金 教育は最大の「振興策」だ


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 県土が狭く資源の乏しい沖縄の発展は、人材育成が大きな鍵を握る。経済、文化など社会のあらゆる面に関わり、ひとたび育った人材は一生、社会に貢献するのだから、教育は最も幅広く、有用な「振興策」と言える。特区などよりはるかに効果は高かろう。

 その意味で誠に意義深い。県教育委員会は県外大学へ進学する県出身学生を支援するため、返済義務のない給付型奨学金創設を検討している。ぜひ創設し、積極展開してほしい。
 きっかけは老朽化した首都圏学生寮の取り壊し・売却のようだ。学生寮は進学を支えてきたが、東京など大都市に限られる。近年、県出身者は地方の国公立大にも入学するなど、進学先地域は多様化しており、首都圏のみならずあらゆる地域の学生を支援しようとこの制度が浮上した。
 文科省の資料によると、日本の大学の授業料は先進国中、飛び抜けて高い。北欧は軒並み無償、独仏は年額1万円台なのに、日本は国公立でも初年度80万円以上、私立は120万円を超す。しかも奨学金を受ける学生は各国で5割を超えるのに対し、日本は2割台。欧州では給付型が多いのに対し、日本は貸与型がほとんどだ。
 だが若年層は就職しても収入が低いから、返済が生活を圧迫し、滞る例も目立つ。だから給付型の充実がつとに求められていた。
 国内総生産(GDP)比で見た高等教育への公的財政支出は、経済協力開発機構(OECD)平均が1・1%なのに日本は0・5%で、先進国中最低水準だ。もっと大胆に支出していい。
 国連の社会権規約は「無償教育の漸進的導入」をうたう。高等教育の私費負担軽減は世界的潮流なのだ。
 戦後の沖縄には米国留学制度があった。米国の施政権下で評価しうるほとんど唯一の政策だ。その後は日本政府による国費制度で多くの人が学んだ。沖縄を支えてきたのはこうした人々だ。平均所得の低い沖縄でこうした制度がなければ今日の発展がなかったのは間違いない。
 今回検討する制度はその復活と言っていい。過去の経験に照らしても、その有効性は明らかなのだ。
 今後の沖縄の地平を切り開く意味でも、制度の創設と大胆な展開を求めたい。県外だけでなく、県内進学への支援も検討してほしい。