年度内着工検討 県民の無力感狙う企てだ


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 地元の反対にはお構いなしに、とにかく工事を進めようということなのか。この政権の粗野な体質にあらためて憤りを覚える。

 政府は2014年度内に、米軍普天間飛行場の辺野古移設に向けた埋め立ての本体工事に着手する方向で検討に入った。補正予算編成も視野に、年度内に数百億円の追加予算計上を想定している。移設計画への審判が示される11月の知事選を前に、こうした発想が出てくること自体、許されないことだ。
 重ねて指摘するが、世論調査では県内移設に県民の7割以上が反対している。これは前の民主党政権下でも現在の自民党政権でも変わらない。圧倒的多数の民意は辺野古移設に反対なのである。
 地元名護市では移設に反対する稲嶺進市長が前回選挙より差を広げて再選された。こうした事実には目をつぶり、仲井真弘多知事の埋め立て承認を根拠に移設作業を強行しているが、県外移設を掲げていた知事の承認は「公約違反」と県民の7割が批判している。
 政府は移設関連経費として14年度予備費と、5年を限度に支出が認められる「非特定国庫債務負担行為」から計637億円を計上したばかりだ。護岸工事に必要な工作物の製作や汚濁防止膜などの設置費などを盛り込んだという。
 昨年12月の14年度予算案の編成時は知事が埋め立てを承認していなかったため、計上を見送った経費だ。国会承認も経ずに地元が反対する事業に経費を計上したことは大いに疑問だ。まして数百億円を追加計上しようとするのは公金支出の在り方としてもおかしい。
 政府が当初予定の15年度から着工時期を早めようとするのには、首相官邸の意向が強く働いているとされる。安倍晋三首相は先の来県でも「沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら」などと語ったが、虚言にすぎない。
 1日には代替基地建設予定地にかかる陸域部分での既存施設解体工事に着手している。年度内の埋め立て着工方針などと併せて、知事選を前に有無を言わさぬ姿勢を示し、県民に無力感を与えようという意図なのだろうが、甚だ筋違いだ。
 民意を無視した移設作業は、今日の民主主義国家で許されるはずがない。恥ずべき振る舞いであることを安倍政権は自覚すべきであり、県民はこうした政権の愚行に従属する筋合いは全くない。