高校生無料塾 教育予算を大胆に増やそう


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 沖縄の発展を図るためには、何を置いても人材育成に力を注ぐべきである。教育分野にはもっともっと予算を投じてもらいたい。

 県が本年度から、大学進学を希望しながら経済的な事情で塾に通うことができない生活困窮世帯の高校生の進学を支援する事業を始める。民間事業者に委託して、対象となる高校生向けに無料の学習塾を設けるほか、親に対しては奨学金や貸付制度など進学に関する情報提供や相談受け付けを行う予定だ。
 貧困による教育格差を是正し、貧困の世代間連鎖を断ち切ることが目的だ。事業を評価したい。
 沖縄は1人当たりの所得が依然全国最下位である上に、雇用者全体に占める非正規労働者の割合は2012年調査で44・5%と全国で最も高い。子育て世帯で所得が300万円未満の割合は約3割と全国で突出して高く、若年者の失業率も全国最悪の水準にある。
 一人親世帯の割合は全国の約2倍だ。県によると、生活保護世帯の高校進学率も全国87・5%に対し、沖縄は75・5%(10年調査)と開きがある。経済格差が教育格差につながっている実態は明らかであり、支援は急務であろう。
 県は生活保護世帯の小中学生を対象にした学習支援事業を11年度に開始し、生活保護に準ずる世帯向けにも12年度から民間団体などの協力で行っている。今回はこれを高校生向けに拡充するものだ。
 児童扶養手当の受給世帯や非課税世帯などの高校3年生らを対象に初年度は20人程度を受け入れ、1回2時間以上の授業を週4回行う。個々の学力や進路希望に応じたきめ細かい指導を通して、ぜひ大きな成果を挙げてほしい。
 復帰後の沖縄振興施策で社会・経済資本の整備は着実に進展した一方、見落とされがちなのが教育分野だ。その格差は縮まったとは言い難い。むしろ大学進学率は復帰の1972年時点では沖縄26・5%、全国29・2%と大差ないが、2013年には沖縄38・2%、全国53・2%と差が15ポイントにも広がっている。
 今回の事業費は約1400万円で、国の一括交付金を活用する。一括交付金の使途をめぐってはさまざまな議論があるが、こうした分野にこそ集中的に予算を分配したい。若者に夢と希望を与え、沖縄の展望を切り開くためには、教育分野に大胆過ぎるくらいの予算の投下があってしかるべきだ。