セクハラやじ 議場の人権侵害を許すな


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 この国の「言論の府」は人権侵害が横行する組織に堕してしまったのか。そんな疑念を抱かざるを得ない。4月17日の衆院総務委員会で、上西小百合議員に対し、大西英男議員が「早く結婚して子どもを産まないと駄目だぞ」と「セクハラやじ」を浴びせていた。

 個人の尊厳を深く傷つける暴言である。しかも、上西氏や議事録によると、やじが飛んだ際、周囲の議員から笑い声や拍手が起こったという。人権侵害を許容する行為に等しい。東京都議会に続く「セクハラやじ」の発覚によって、選良の人権感覚が厳しく問われる事態となった。
 一般の企業組織の中で、このような発言をしたらどうなるのか考えてみたい。人権意識の欠落が追及され、何らかの処分が下される可能性があろう。上司や部下からも非難を受けるはずだ。自治会やPTAなどの地域組織でも同様である。親しい間柄であっても人権を損ねるような行為は許さない。これが一般社会の常識である。
 ところが、一般社会の常識は国会や東京都議会には通用しないようだ。「やじは議会の華」という言葉に甘え、人権を侵すやじを議場で発する。周囲もそれをとがめず、笑い声や拍手で応じる。このような議会の常識を一般社会は容認しないし、人権感覚に欠けた議員を選良とは認めない。
 海外の目は厳しい。都議会でやじを浴びた塩村文夏都議が6月24日に日本外国特派員協会で記者会見した際、参加した海外メディアの記者から「(やじ問題は)50年前のような話」という驚きの声が上がった。ドイツのジャーナリストは「ドイツで同じことをやったら議会はストップし、議員は直ちに辞職する。日本社会全体でもっと怒りを示すべきだ」と述べた。
 京都大の落合恵美子教授(社会学)も「海外ならば、今回のやじは明らかな差別発言に当たる。議員辞職すべき問題だ」と指摘した。これが世界の常識であることを肝に銘じるべきだ。
 自民党の石破茂幹事長は都議会と衆院総務委員会でやじを飛ばした議員が党所属であることを踏まえ、所属の国会議員と都道府県連に、不用意な発言を慎むよう注意する通達を出す方針だ。政権党のおごりを拭い、人権意識を高めるため議員研修をやってはどうか。
 一般社会に通じない議会の常識を直ちに改めるべきだ。これ以上、人権侵害を放置してはならない。