中韓首脳会談 隣国の蜜月に対処策示せ


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 中国の習近平国家主席が韓国を訪れ、朴槿恵大統領と会談した。中国の国家指導者が、北朝鮮よりも先に韓国を訪問するのはかつてなかったことだ。北朝鮮の金正恩第1書記と会談したことがない習主席は、既に朴大統領とは非公式を含めて5回も会談している。

 度重なる説得に応じず、核実験に執着する金正恩体制との距離感を演出した上で、重要な貿易相手国である韓国との連携強化を優先した格好だ。
 両首脳は共同声明で中韓自由貿易協定(FTA)交渉の年内妥結に向けた努力を盛り込んだ。貿易・投資をめぐる結び付きは一層強まるだろう。
 隣国の首脳同士の「蜜月」が進みつつあるのに、日本との関係は冷え込んだままだ。安倍晋三首相との公式会談は一度も開かれておらず、日中韓首脳会談も2012年5月以来、開かれていない。異常事態と言うしかあるまい。
 中国は尖閣諸島の国有化への反発を強め、安倍首相の靖国神社参拝、歴史認識問題などが中韓両国との関係をとげとげしくした。
 安倍首相は「対話のドアは常にオープン」と言うが、待ちの姿勢に映る。中韓両国との関係改善に向けた具体的な対応を示すべきだ。
 中韓首脳の共同声明は「朝鮮半島での核開発に断固反対する」とし、中韓連携を土台にしてこれまでより強く北朝鮮の核開発にくぎを刺した。一方、日本は北朝鮮が拉致問題で再調査を始めることを踏まえ、経済制裁を一部解除した。
 「日米韓」対「中朝」という戦後長く続いた対立構図が変化している。孤立を深め、対日関係改善に活路を求める北朝鮮の出方を慎重に見極めつつ、6カ国協議の再開にこぎ着け、北朝鮮の核開発に歯止めをかけてもらいたい。
 中韓が共闘する歴史認識問題では、習主席が会談で「抗日戦争勝利と朝鮮半島解放70年」に当たる来年の記念行事開催を提案した。だが、両首脳は、共同記者会見で日本を名指しで批判することを避けた。
 旧日本軍の従軍慰安婦問題の共同研究は共同声明の付属文書にとどめており、対日関係の一層の悪化を避けたいという姿勢もにじむ。
 11月に北京でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれる。それを機に3カ国首脳会談と個別会談が実現できるよう、日中韓3国が粘り強い対話努力を重ねることを望みたい。