はえ縄切断 非を認め速やかに賠償せよ


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 加害者が非を認めず、まず被害届けを出せと言う。まったく不遜な態度だ。

 県内のマグロ漁船のはえ縄が相次いで切断された問題で、県漁業協同組合連合会は、切断したとみられる音響測定艦「インペッカブル」が所属する米海軍に対し、損害賠償を請求する手続きに入った。
 手続きは煩雑だ。まず在日米海軍法務部宛てに被害報告書を送付する。米軍から損害請求書の様式が各漁業者宛てに届く。様式が届き次第、県漁連が損害賠償請求するという手順となっている。
 マグロ漁の最盛期は4月から6月といわれる。請求書様式が届くころは既に漁期が終わっているかもしれない。書き入れ時に高額のはえ縄を切断された漁民の被害は甚大だ。米軍は速やかに非を認め、損害賠償すべきだ。
 被害に遭った漁船の船長は、はえ縄が仕掛けられた海中の真上をインペッカブルが何度も航行していた事実を明らかにした。写真と動画も撮影している。「動かぬ証拠」だ。船長はインペッカブルが「はえ縄を仕掛けた上を何度も往復していた。回収したら切断されていた」と証言している。
 しかも5月に被害に遭った漁船1隻が6月にも被害に遭っていたことも明らかになった。関与が疑われているインペッカブルは被害が集中して報告された5月以降も航行を続けていた可能性がある。中には1隻で7回被害に遭った漁船もある。これまでに少なくとも漁船9隻が21回被害を受けている。
 被害発生から50日過ぎたのに、米軍はなぜ自ら調査して結果を明らかにしないのか。不誠実だ。 
 日本政府はなぜ積極的に動かないのか。事は日本の排他的経済水域(EEZ)で起きている。公海上という理由で人ごとを決め込む態度が解せない。日本の国内法で裁かず、米国内法が適用されるという解釈は本末転倒である。そもそも日米安保条約で米軍を駐留させているから被害が起きる。日本政府にも責任があるはずだ。
 安倍政権は憲法を骨抜きにして集団的自衛権の行使を容認、自衛艦が米艦を守れるようにした。自国の漁船すら守れないのに他国艦を守るという理屈が理解できない。
 日本政府は毅然(きぜん)とした態度で国内法に従って被害を調査し、速やかに賠償させるべきだ。