オレンジ剤検出 返還跡地を総検証せよ


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 決定的証拠が突き付けられた。

 米軍がベトナム戦争で大量に用い、肢体の不自由な子どもたちが大勢生まれる原因となった枯れ葉剤が、沖縄でも貯蔵されていた。
 ことし1月、沖縄市の米軍基地返還跡地のサッカー場に埋められているのが見つかったドラム缶の付着物などから、枯れ葉剤「エージェント・オレンジ」の二つの主要成分が同時に検出された。
 環境汚染の懸念を深めた沖縄市が独自に試料を専門機関に分析させ、オレンジ剤の成分含有を突き止めた。
 米政府は、沖縄でのオレンジ剤の貯蔵、使用を認めておらず、日本政府もそれを追認するばかりで調査さえ求めていない。科学的立証が尽くされた今、こうした怠慢は許されない。
 沖縄は、世界的にも異常な過密基地を抱えている。未調査の返還跡地を含め、全基地で枯れ葉剤などの有害物質による汚染がないか、徹底した調査を尽くすべきだ。県民の健康に悪影響を及ぼしていないかについても検証が必要だ。
 それにしても、日米政府の対応は不誠実極まりない。
 元米兵が県内での枯れ葉剤貯蔵と使用を証言しても、米政府はそれを無視し、基地での保管記録などの不備を挙げ、「証拠がない」として県内貯蔵、使用を否定してきた。さらに、枯れ葉剤使用の後遺症に苦しむ退役軍人の被害補償要求も門前払いしてきた。
 膨大な有害物質を用いてきた在沖米軍基地の使用履歴はほとんど存在しない。そのこと自体が、県民の生命・財産を軽視している表れである。米本国の基地では、化学物質を貯蔵、使用した履歴が残され、基地閉鎖後の汚染調査と浄化に実効を上げている。履歴がない場合は、元基地従業員から聞き取りを実施する入念さである。
 しかし、基地の島・沖縄では最低限の記録保管さえなされず、返還跡地の環境調査に膨大な時間と経費を要し、跡利用が遅れるケースが相次いでいる。沖縄社会の大きな損失だ。
 今回のドラム缶がひそかに埋められていた跡地は、基地のフェンス外にあった。基地内か否かが判然としないグレーゾーンの基地跡地では、米軍の無法行為がまかり通っていた可能性が濃厚である。
 米軍基地に起因する環境汚染の調査義務は日本政府にある。沖縄への露骨な二重基準を排し、汚染の実態把握に乗り出すべきだ。