日米防衛相会談 地元の民意を直視すべきだ


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 小野寺五典防衛相とヘーゲル米国防長官が会談し、米軍普天間飛行場の移設計画の着実な推進を確認した。地元の頭越しに進められる非民主的な沖縄政策の在り方に、あらためて憤りを覚える。

 小野寺氏は辺野古の陸上部分の関連工事に着手したことを報告。「普天間移設を含めた在日米軍再編を早期かつ着実に進める」とヘーゲル氏に伝えた。
 移設問題で日本政府は、近く海底ボーリング調査に着手する方針だ。小野寺氏の発言からは、作業の進展を米側にアピールし、移設の既成事実化を
進めようという思惑がうかがえる。
 だが本来、民主主義国家の閣僚として米国に伝えるべきは別にある。仲井真弘多知事の辺野古埋め立て承認に対し、県民の7割以上が県外移設公約に違反していると反発していることであり、現在も約8割が辺野古移設に反対している事実を伝えなければならない。
 会談では沖縄の基地負担軽減に努力することも確認した。だが仲井真知事の埋め立て承認に際し、安倍晋三首相が取り組みを約束した普天間の5年以内の運用停止には、今回も言及していない。
 運用停止問題で米政府は日本側に「代替施設の完成なしに運用停止はできない」と伝えている。首相らの説明が「口約束」であることはもはや誰の目にも明らかだ。
 移設計画では、共同通信が入手した2008年作成の米政府内部文書で、国道329号から山側の辺野古ダム周辺に兵員宿舎など30棟以上を建設する計画が記載されていることも明らかになった。
 政府が提出した環境影響評価書などには記載がない施設であり、ひそかに計画されているとすれば言語道断だ。両政府は事実関係を速やかに説明する責任がある。
 防衛相会談で小野寺氏は「日本は米国にとって頼れる同盟国だ」と安倍政権による集団的自衛権の行使容認の閣議決定を誇った。
 安倍首相が今回閣議決定を急いだ背景には、集団的自衛権で米側の歓心を買うことで、尖閣問題に米軍を引きずり込みたい思惑があるとされる。だがヘーゲル氏は「中国との建設的な関係を育成するよう話した」と日本側にくぎを刺している。
 米国が日中関係の立て直しを求めていることの意味を安倍政権は深く理解する必要がある。米国頼みの外交・安全保障は、いい加減改めるべきだ。