県警に公安捜査隊 国家による住民弾圧だ


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 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う海底ボーリング調査に向け、政府が警察庁に対して警備態勢の強化を指示した。このため県警は近く公安捜査隊を設置する。60~70人の警備部隊を組織する予定だ。現場での刑事特別法違反などの摘発に備えるという。計画に異議を唱える意思表示に対して、力ずくで押さえ込む姿勢は許し難い。

 海上保安庁も全国から船舶や人員を沖縄に応援で派遣し、反対運動を排除するための警備強化を進める。防衛省もボーリングなどの調査船の周囲で監視する警戒船を調査期間中に延べ1252隻投入する計画だ。国家による大規模な住民弾圧が海と陸で繰り広げられるのを放置するわけにはいかない。
 県警は2012年に垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが普天間飛行場に配備された時の抗議行動でも公安捜査隊を編成した。あの時、野嵩ゲートでは不当な住民隔離が起きた。9月30日夜、配備反対を唱えていた人々が座り込む場所が米軍施設内だったとして引きずられ、警察の大型車両でつくった隔離場所に押し込められた。現場の警察官は「入れたら出すな」と話し、30人以上の人々が外に出ることを許されぬまま3時間近く軟禁状態にされた。県警はこうした行為について「留め置いた。拘束や監禁の認識はない」と説明したが、拘束以外の何物でもない。極めて不当な行為だ。
 県警の警察官の多くは県出身者だ。県民同士が対峙(たいじ)し合う構図がつくられようとしていることも許し難い。政府は東京で高見の見物を決め込み、地元の人同士の対立をあおることで物事を円滑に進めているとしか思えない。植民地による宗主国の手法そのものだ。
 そもそも理不尽なことを繰り返してきたのは政府の方だ。環境影響評価書にオスプレイの配備情報を盛り込んだのは住民が意見する機会がない評価書段階になってからだ。現場海域は県が策定した「自然環境保全に関する指針」で「自然環境の厳正な保護を図る区域」の最も重いランク1に評価されている。環境省の有識者会議も海の生物の多様性を守るための「重要海域」に選定している。環境保護の潮流への背信行為と言わざるを得ない。
 政府は権力を総動員して工事を強行するのではなく、計画そのものを見直すことに力を注ぐべきだ。