密約文書不開示 闇から闇に葬るつもりか


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 国民の知る権利をないがしろにする外務省の「不誠実」(一審判決)な対応を、司法が追認する不誠実極まりない判決だ。

 沖縄返還をめぐる日米密約文書開示を求めた訴訟の最高裁判決は、一審の開示命令を取り消した二審判決を支持、原告の上告を棄却した。原告側の敗訴が確定した。
 判決は、密約文書の存在を立証する責任を、機密文書に自由に接することができない原告側に負わせた。全く理解できない。本来なら文書の存在を容易に確認できる国側が明らかにすべきだ。国にとって都合の悪い文書を闇から闇に葬ることに司法が手を貸したに等しい。
 民主主義が効果的に機能するために、国民には国が何をしているのか知る権利がある。この訴訟は秘密を隠そうとする国に対し、知る権利という憲法理念の具現化を求めた点に意義がある。
 国は密約はないとうそをつき続けたが一、二審とも密約の存在を認定した。最高裁でもその判断を維持したことは重要だ。一審は文書の開示を命じ、ないというならその理由を説明する責任は国にあるとした。だが最高裁は下級審が示した判断を覆した。日本の情報公開制度改革に水を差す判決といえよう。
 判決は、密約文書破棄についてほとんど触れていない。なぜ密約が結ばれ、いつどのような経緯で廃棄されたのか。司法は国に対して説明責任を果たすよう求めるべきだった。国民の知る権利よりも情報を管理する国側の視点に立った判決だ。密約を交わし、文書を廃棄した国側は誰一人として責任を問われない。国家が犯した罪に切り込めない司法の限界を浮き彫りにしたといえよう。
 今回の訴訟で情報公開請求の対象となったような外交文書は、年内にも施行予定の特定秘密保護法で秘密指定されるとみられる。この法律は組織的な情報隠しを禁じる条項がないから、秘密がますます拡大する可能性がある。
 秘密指定すれば永久に解除されないような事態を招いてはならない。今後、重要な外交文書の保全と公開のルールを厳密に定めなければならない。
 民主主義が機能不全を起こすとき、最初に犠牲になるのは真実だ。知る権利や言論の自由を狭めてはならない。国は国民の知る権利にきちんと応じる責務があることを肝に銘じるべきだ。