子の貧困率最悪 是正策を大胆に進めたい


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 子どもの貧困問題が深刻化している。政府は「世代間格差」の是正も含めて早急に取り組むべきだ。

 厚生労働省の国民生活基礎調査によると、平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の割合を示す「子どもの貧困率」が2012年時点で16・3%と過去最悪を更新した。前回調査の09年時点から0・6ポイント悪化している。
 1学級35人とすると、クラスに5、6人は生活困窮家庭の子どもがいる計算になる。残念ながら県内ではこの数字はさらに高まろう。
 貧困率悪化に関して厚労省は、デフレ経済で子育て世帯の所得が減少したことを要因に挙げるが、それだけではあるまい。以前から「子どもの貧困大国」といった批判があるにもかかわらず、対策が遅れた面は否めないだろう。
 大人1人で子どもを育てている世帯の貧困率は54・6%に達した。母子世帯が増加し、働く母親たちの非正規就業が増えていることなどがその背景にある。
 沖縄はひとり親世帯率が全国平均の約2倍で、非正規労働者の割合は全国で最も高い。子どもの貧困問題はより深刻な状況だと指摘されており、雇用支援なども含めて力を入れなければならない。
 今回の調査では、高齢者に比べて子育て世代が経済的な苦境に立たされる「世代間格差」も浮き彫りになった。母子世帯の平均貯蓄額(13年6月末時点)は264万円で、65歳の高齢者世帯の1268万円の約2割にとどまる。
 国立社会保障・人口問題研究所によると、日本の11年度の社会支出のうち、年金や訪問介護など「高齢」関係は46・5%を占め、「家族」関係はわずか5・7%だ。高齢者層に偏る支出の見直しは急務だろうが、低所得者全体に目配りが必要なことは言うまでもない。
 昨年6月、生活が苦しい家庭の子どもの教育を支援する「子どもの貧困対策推進法」が成立し、国と自治体の責任が明確化された。県も生活保護世帯の進学支援事業の拡充などを検討しており、こうした取り組みをぜひ加速させてほしい。
 政府は今月下旬に子どもの貧困対策の大綱を閣議決定する。数値目標は盛り込まない見通しだが、子どもへの公的投資拡充に向けた具体策を打ち出すべきだ。経済格差が教育格差に直結している現状を是正し、貧困の連鎖を断つ施策を強力に推し進める必要がある。