文科相指導方針 露骨な政治介入はやめよ


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 沖縄の教育現場を萎縮させるため、議場で大臣と国会議員が問答を演出したかのようだった。このような露骨な政治介入は直ちにやめるべきだ。

 下村博文文部科学相は15日の参院予算委員会で、集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定について学校現場で「不適切」な解説があった場合、教育委員会を通じて指導する考えを示した。県選出の島尻安伊子氏(自民)の質問に答えた。
 両者のやりとりは不可解である。
 島尻氏は、集団的自衛権で「誤解」を受けるような教師の言動があったという情報提供に基づくと述べているが、具体的内容については明らかにしていない。教師本人への確認も行っていない。事実関係があいまいなままの質疑だった。
 下村文科相は「詳細が分からない時点での判断は差し控える」と前置きをした上で「不適切」授業への指導方針を示した。「詳細が分からない」のなら、答弁そのものを控えるのが普通ではないか。
 根拠を示さないまま質疑し、確証がないまま答弁する。緊張感を持って臨むべき国会論戦の名に値しない。「沖縄の教育界が偏った教育をしていると印象付けることを狙った出来レースではないか」という教育現場の疑念は当然だ。
 質疑の意図について島尻氏は「教師の発言によって子どもたちを不安に陥らせてはいけない」と説明する。認識が逆ではないか。
 集団的自衛権の行使容認に突き進んだ安倍政権の暴走に対し、多くの国民は危機感を抱いている。内閣支持率の下落、滋賀県知事選での自公候補落選はその表れだ。
 高教組定期大会でも、集団的自衛権行使によって沖縄が戦場に巻き込まれる恐れがあるとして、高校生が不安を抱いていることが報告された。このような高校生の不安を島尻氏は直視すべきだ。
 同じ委員会で、安倍晋三首相は自衛隊に認める「必要最小限度」の武力行使について「密接な関係にある他国に対する武力攻撃の規模、態様に応じて判断できる」と答えた。これでは自衛隊の活動に歯止めが利かず、国民の不安は広がるばかりだ。
 島尻氏は教育現場に介入する前に県民の不安を率直に政府に伝え、閣議決定の撤回を迫るべきだ。それこそが地上戦を経験し、今もなお米軍基地を抱える本県の選出議員のあるべき姿勢のはずだ。