辺野古掘削許可 民意無視は許されない


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 県が国と一体となって米軍普天間飛行場の辺野古移設に突き進んでいる。仲井真弘多知事が県外移設の公約を堅持していると繰り返しても、信じる県民はいまい。

 県は米軍普天間飛行場の辺野古移設に伴う沖縄防衛局の海底ボーリング(掘削)調査を申請受理から3日で許可した。
 知事が国の埋め立て申請を許可した後とはいえ、環境アセス審査時の慎重姿勢とはあまりに対照的である。
 県は掘削調査を認めた理由を「影響が軽微」としているが果たしてそうだろうか。
 掘削調査海域には県の「レッドデータおきなわ」で「ごく近い将来に野生での絶滅の危険性が極めて高い」絶滅危惧IA類に指定されたジュゴンの餌場となる藻場がある。豊かな海の源ともなるサンゴの群落もある。
 防衛局は海上の9地点に単管足場を組み、水深の深い12地点にはスパット台船で海底の掘削調査を実施する。調査期間は140日間を予定している。それ以外に抗議行動を排除するためのブイの設置工事もある。
 県の許可が妥当か、環境行政との整合性は取られているのか。それを判断するためにも、県には掘削調査の「影響が軽微」となる根拠を明らかにする責任がある。
 県民の多くが辺野古移設に反対している。沖縄の将来を左右する新基地建設に向けた掘削調査である。県は即座に掘削調査申請の関係文書を開示するべきである。
 しかしながら県にはその極めて当然な要求に応える誠実さが感じられない。
 県議会の喜納昌春議長の資料提出への協力依頼にさえ応じていない。行政のチェック機関たる議会の要求に応えるのは当然である。にもかかわらず提供しないのはいかがなものか。
 県は不開示の理由を当初「県の意思決定の中立性が不当に損なわれる恐れがある」としていた。それが掘削調査許可後は「事業の適正な遂行に支障を及ぼしかねない」と防衛局側に立った理由に変わった。これでは申請を審査する側の県が、事業側の国と協力して辺野古移設を推進していると言われても仕方ない。
 県外移設を追求していた県が国と二人三脚で辺野古移設に邁進(まいしん)する状況は、多くの県民にとっては悪夢に映る。これ以上、民意の重みを無視することは許されない。