マレーシア機撃墜 足並みそろえ徹底究明を


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 目を覆いたくなるような惨劇だ。マレーシア航空の旅客機がウクライナ東部で墜落、乗員乗客298人の全員が死亡した。

 米大統領は、親ロ派支配地域から発射された地対空ミサイルによって撃墜されたことを「確信している」と明言した。米国防総省は「非常に強力な証拠」があると発表している。
 民間機への攻撃だとすれば、許しがたい行為だ。中立的な国際的調査団による徹底的な原因究明を求めたい。
 ウクライナ政府軍と親ロ派武装組織は直ちに停戦し、公正な調査が行われるよう努力すべきだ。
 マレーシア航空機は、夏休みをアジアで過ごす観光客や国際会議出席者を乗せ、オランダからマレーシアに向かっていた。乗客はウクライナ上空で一瞬にして命を奪われた。
 航空機は高度約1万メートルの上空を飛行していた。携行型の地対空ミサイルでは迎撃できず、高度2万5千メートルの標的を攻撃できるロシア製の地対空ミサイル「ブク」が使われたとみられている。
 ウクライナでは親欧米派と親ロ派が対立し、親ロ派政権が崩壊した。3月にはロシアが南部クリミア編入を強行した。ウクライナ東部の二つの州で親ロ派武装組織が独立宣言し、現在も政府軍との間で戦闘が続く。
 今回の民間機墜落についてウクライナ政府は、親ロ派がロシアからの武器で撃墜したと主張する。しかし親ロ派は自分たちが高性能ミサイルを保有していないとして、ウクライナ軍の仕業と主張し、互いに非難し合っている。これでは墜落の真相究明はままならない。徹底的な調査を実現するために国際社会が足並みをそろえなければならない。
 第1次世界大戦のきっかけとなったサラエボ事件から6月28日で100年を迎えた。各国は20世紀の危機を招いた歴史の教訓を確認し、人類の平和と共存を誓ったはずだ。
 しかし、教訓を無視するかのように、クリミアを併合したロシアと、事態を収拾できなかった欧米の亀裂は深まっている。今やウクライナ紛争は世界の不安定要素になっている。
 ロシアは親ロ派武装勢力へ肩入れをやめ、ウクライナの安定に努力すべきだ。欧米や日本は今度こそ停戦と和平への取り組みを強力に進めるべきだ。