脱法ドラッグ 社会の破壊は許さない


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 危険な薬物のまん延は人と社会を破壊しかねない。断じて許してはならず、この社会から徹底して排除したい。

 政府は脱法ドラッグの緊急対策を決めた。指定薬物への緊急指定手続きの迅速化や集中取り締まりを展開する。事件・事故の続発ぶりを見れば当然だ。政府を挙げて是が非でも根絶してもらいたい。
 脱法ドラッグ(脱法ハーブ)は大麻や覚せい剤に似た合成成分を吹き付けた香草だ。体内摂取が目的だと「未承認医薬品の販売」、つまり薬事法違反となるため、販売店は「お香」「観賞用の合法アロマ(ハーブ)」などと称して売っている。
 だが吸引後、錯乱して暴れたり意識を失ったりする例が後を絶たない。中でも車の運転は極めて危険だ。6月には東京・池袋で歩道を暴走した車が次々に人をはね、8人が死傷した。今月も吸引後と疑われる事故例が相次いでいる。
 本人にも健康被害が起こりうる。仲間と吸引後に死亡した若者が、司法解剖で急性薬物中毒と判明した例もあった。一度手を出しただけで耳鳴りなど重い後遺症に苦しむこともある。有害性は明らかだ。
 怖いのは水面下で浸透しつつあることだ。厚生労働省の研究班が昨年実施した調査では0・6%の人に使用歴があった。国立精神・神経医療研究センターの調査では、驚くべきことに中学生でも男子の0・3%、女子で0・2%が使用歴を持つ。民間団体の調査では13・2%の中高生が「使うかどうかは個人の自由」と答えている。乱用の危険は忍び寄っているのだ。
 啓発が極めて重要となる。政府の緊急対策もその点に触れているが、若年層にも危険情報が行きわたる実効ある施策を進めてほしい。
 従来、薬物指定しても成分の一部を変えただけの「新製品」が現れ、「いたちごっこ」となるのが通例だった。だが昨年3月、政府は、類似成分を含む物質を一括して規制する「包括指定」を導入した。この結果、規制対象は92種から今では1400種近くへと一気に増えた。
 だが池袋の事故での使用品は規制外だった。政府は今後、海外の薬物情報を積極的に入手し、国内流通前に先手を打って指定する。指定外の成分でも「未承認医薬品」と見なして積極的に取り締まるという。学校や家庭でも危険性を戒めたい。なし得る手だてを総動員し、まん延を断固として防ごう。