秘密法運用素案 隠蔽防ぐ歯止めにならぬ


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 国民が知るべき国の重要な情報が隠蔽(いんぺい)されても、それを防ぐ歯止めにはなりそうもない。

 12月の特定秘密保護法の施行に向け、政府は特定秘密の指定や解除の統一基準の素案を示し、有識者会議「情報保全諮問会議」(座長・渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長兼主筆)が了承した。
 だが、公開しては不都合だと国が判断する情報を隠蔽できる危うさは払拭(ふっしょく)できていない。素案は基本的な考え方として「必要最小限の情報を必要最低限の期間に限って指定する」とした。至極当然だが、実際にそれができるのかが全く見えない。
 特定秘密の指定対象は55項目に細分化したが「国民の生命、身体の保護」「国際社会の平和と安全の確保」などと抽象的で、いかようにも解釈できる余地を残す。
 秘密の期間もあいまいだ。省庁が秘密指定を解除した文書のうち、指定から30年を超えるものは国立公文書館に移管するが、30年未満の文書は首相の同意によって廃棄が可能となっている。
 法案段階からの懸念の通り、官僚の裁量によって都合の悪い情報は秘密にされ、国民から遠ざけることができる。秘密法の根本的な問題点は何ら解消されていない。
 情報隠しを防ぐチェック機能はお手盛りそのもので脆弱(ぜいじゃく)だ。内閣官房に省庁の事務次官級でつくる「内閣保全監視委員会」を置き、内閣府には審議官級の「独立公文書管理監」をトップに据える「独立保全観察室」を設ける構想だ。
 管理監は秘密の概要リストしか渡されず、秘密情報の提出を求めても、省庁側が「安全保障に支障がある」と主張すれば拒むことができる。官房長官が束ねる「内閣保全監視委員会」も設け、情報提出や是正を要求できる仕組みだが、しょせん「身内の組織」である。
 内部通報制度もあるが、窓口が省庁内にあっては、自らの職場の不適切な行為を通報することに尻込みすることは目に見えている。政府内に屋上屋を架すかのような対応であり、体裁を取り繕った観は否めない。
 政府から独立し、情報開示を命令できる強い権限を持つ第三者機関ができない限り、実効性は担保できまい。沖縄返還密約が示した通り、国民の「知る権利」がないがしろにされてしまう。
 私たちはあらためて「知る権利」と民主主義をないがしろにする特定秘密保護法の廃案を求める。