ガザ地上戦 これ以上、住民犠牲許すな


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 これは無差別殺戮(さつりく)だ。イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザの軍事作戦で、死者数が550人を超え、約3500人以上が負傷した。大半はイスラム原理主義組織ハマスの戦闘員ではない。子どもを含む市民だ。

 ハマスはエジプトによる交渉呼び掛けを拒否し、周辺国の足並みは乱れている。イスラエルに対する米国の停戦取り組みも弱い。国連が影響力を発揮しているように見えない。
 国際紛争を解決する機能の低下を危惧する。今こそ国際社会が一致団結して早期停戦に向け力を尽くすべきだ。
 ガザの戦闘は、ハマスがイスラエルへロケット弾攻撃を急拡大させたことが発端だ。ハマスが強硬姿勢を強めた背景は、経済的に追い詰められたという見方がある。
 ハマスの母体はエジプトのムスリム同胞団で、同胞団出身のモルシ前大統領と良好な関係を築いていた。だが、昨年のクーデターによってモルシ氏が倒れた後、エジプトがガザへの物資供給を停止、ガザ経済は急速に悪化した。経済的に苦しむガザ住民の支持を取り戻すため、ハマスが武力衝突をつくり出したというわけだ。
 対するイスラエル側は強硬だ。ネタニヤフ政権内部の右派が強硬姿勢を崩さないからだという。20日にガザ市東部の住宅地などを大規模攻撃、22日はモスク(イスラム教礼拝所)を含む70カ所以上を空爆した。事態の泥沼化を深く憂慮する。
 力に対し力で対抗する構図は住民の犠牲者を拡大させ、住民感情を悪化させるだけで根本的な解決につながらない。激しい攻撃が続く現地の病院は、輸血用の血液や医療器具が大幅に不足し、救える命を救えない状況が続いている。
 停戦調停が進まない中で、地上侵攻で家を追われた避難民は最低限必要な物資さえない。国際社会の緊急支援が急がれる。
 オバマ米大統領は21日、ガザ市民の犠牲者が増大していることを「深く懸念している」と表明した。ケリー米国務長官に即時停戦への実現へ最大限努力するよう指示した。
 潘基文(バンキムン)国連事務総長やケリー米国務長官が中東入りし停戦調停が本格化するが、早期停戦は容易ではない状況だ。しかし、これ以上住民の犠牲を増やしてはならない。あらゆる手を尽くし、早期停戦を実現すべきだ。