年金目減り時代 低所得高齢者に配慮を


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 日本は、インフレに公的年金給付の伸びが追い付かない「年金目減り時代」に突入する。

 少子高齢化に対応して、賃金や物価の伸びより年金の引き上げ幅を低く抑える仕組み(マクロ経済スライド)が、2015年度に初めて実施される公算が大きくなったからだ。
 30年後の基礎年金は、14年度に比べ、3割目減りする。基礎年金だけしか受け取れない国民年金加入者への影響は大きい。基礎年金の目減りを抑え、低所得高齢者の対策を急ぐべきだ。
 年金は現役世代から働けなくなった高齢世代への「仕送り」だ。少子化で現役世代が少なくなり、平均寿命が伸びて高齢者が増え続けるため、将来世代が受け取る額が減ってしまう。
 厚生労働省の公的年金の将来見通しによると、現在、厚生年金の給付水準は現役世代の収入の6割強だが、経済成長を前提とした標準的なケースでは30年後に5割程度に目減りし、低成長なら5割を割り込むことも想定している。世代間格差が鮮明になっている。あまりに低い給付額では、保険料を納めようという意識がそがれてしまうだろう。
 同省は、少子高齢化に合わせて年金水準を抑えるマクロ経済スライドを取り入れなければ、31年には年金積立金が枯渇すると試算している。
 現在65歳の人(40年加入の場合)の基礎年金受給額は、月約6万4千円。マクロ経済スライドを実施すると、30年後は実質約5万1千円に落ち込む。これでは老後の生活を維持するのは難しいだろう。基礎年金の3割目減りは抑えなければならない。低年金の高齢者に対して年金とは別の仕組みが必要ではないか。
 負担に回る支え手を増やすために、女性が働きやすい環境を整えたり、非正規雇用者の厚生年金加入を拡大させたりするのも一案だろう。
 厚労省は、現在20歳から40年間となっている年金保険料の拠出(納付)期間を、65歳に到達するまで5年延長する案や、原則65歳の受給開始年齢を遅らせる「繰り下げ受給」案を検討している。
 将来世代への水準を確保するため、雇用の安定や少子化解消に向けた政策と年金制度改革は不可欠だ。同時に高齢者の痛みを少なくする対策も必要だ。