島ぐるみ会議 尊厳回復へ再結集を


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 立場の違いを超える言葉が、これほど求められた大会もないだろう。27日の島ぐるみ会議結成大会は人波であふれたが、参加者は登壇者のあいさつに聴き入った。中でも保守政界や経済界の登壇者のあいさつは静けさに包まれ、県民の再結集を呼び掛ける意見にはひときわ大きな拍手が上がった。

 もう一度、県民の心を結集させたい。会場に共通していたのはそんな思いだ。「オール沖縄」再構築の必要性をあらためて自覚したい。
 登壇者の金城徹那覇市議が述べたように、世論調査では今も県内移設反対が74%もあり、その中には自民党支持者も多い。辺野古反対は保革を超えた民意だ。
 沖縄は全国のどこよりも米軍基地の被害を深く受けてきた。例えて言えば、原発被害の辛酸をなめた福島県で、県民の7割超が原発新設に反対する中、政府が原発建設を強行したりするだろうか。だが沖縄でならそれをしてもよい。政府は明らかにそう見なしている。誰が考えても差別であろう。
 呉屋守将金秀グループ会長は「経済活動は大事だが、ウチナーンチュの尊厳、基本的人権、平和はもっと重要だ」と訴えた。ひときわ大きな拍手が起こったのは、会場の多くがその被差別認識を共有しているからだろう。
 県内移設断念を求めて県内41市町村の全首長、全議長、県議らが署名した昨年1月の「建白書」提出は戦後史に特筆される。「銃剣とブルドーザー」と称される米軍の軍用地強制接収・一括買い上げに抵抗した「島ぐるみ闘争」以来の、県民を挙げた運動だった。
 仲井真弘多知事らの容認でその枠組みは崩れたが、仲里利信元県議会議長が鋭く指摘したように「沖縄で保革がけんかをして喜ぶのは日本政府と米国」だ。移設強行を止めるという民意を実現するためにも、県民の再結集が必要だ。
 何も絶望することはない。民主主義と人道に照らせば、理は沖縄にある。沖縄が一つになって意思表示すれば、世界最強の米軍でさえ土地の買い上げを撤回した。「島ぐるみ」の効果は歴史で実証済みなのだ。
 差別を受けてもいいという人は世の中にいない。だから人としての尊厳ある扱いを求める沖縄の意思は不可逆的である。辺野古移設強行はそんな差別の象徴だ。理不尽な扱いの代償の重さを、日米両政府に思い知らせよう。