経済財政白書 女性活用は議論尽くせ


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 甘利明経済再生担当相は2014年度経済財政白書を提出した。

 景気の現状を「デフレ脱却に向けて前進している」との認識を示した。一方、人口減少や経常収支の赤字化に警鐘を鳴らし、日本経済の構造的変化への対応が急務とした。
 白書は少子高齢化による労働不足を解消するため、子育て女性と高齢者の労働参加が好ましいと指摘している。しかし、経済成長を優先するあまり、国を挙げて女性と高齢者を労働に参加させるやり方では、国民の理解は得られまい。議論を重ねた上で雇用環境を整備する必要があるだろう。
 日本社会に横たわる課題は少子高齢化だ。2月に発表された厚生労働省の「雇用政策研究会報告書」によると、少子高齢化によって現状6270万人の就業者数は2030年には5449万人と821万人も減少する。
 自書は、子育て支援を拡充すれば働く女性を約100万人増やせる余地があるとし、女性の労働参加に活路を求めた。しかし企業の自主的な努力には限界がある。子育てと仕事を両立できる環境を整備するため、子育て関連予算の大幅拡充など大胆な施策が必要だ。
 年金の支給開始年齢を引き上げることによって、年金の受け取り開始まで働く高齢者が増え、労働力不足の緩和につながるとも指摘する。高齢者は個々の職業能力が大きく異なるが「我が国には働く意欲の高い高齢者が多い」として、高齢者の労働参加を促している。これが高齢者を犠牲にすることにつながってはならない。
 17年ぶりの消費増税について白書は、駆け込み需要を最大3兆円程度と分析。増税後に消費を下押しする反動減も同規模に膨らむとみられ、景気の懸念材料に挙げた。さらなる増税は慎重でなければならない。
 景気回復に伴い、1人当たりの名目賃金は、正社員などの一般労働者は12年末から持ち直してきたが、パートやアルバイトは横ばいが続いている。優秀な人材を正社員にすることによって「企業収益拡大につながる」という白書の指摘は、参考になるのではないか。
 貿易で外貨を獲得してきた日本経済の構造が変化している。白書は「稼ぐ力」を高める必要があると指摘するが、経済成長重視ではなく豊かに生きる力も必要だ。