ガザへの攻撃再開 力を合わせて停戦実現を


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 イスラエル軍がパレスチナ自治区への攻撃を再開した。国連の要請に応じる形で延長されていた人道目的の一時停戦が崩壊し、戦闘の激化と長期化が懸念される極めて深刻な事態だ。ガザ当局によると、ガザでは子どもを含む約1100人が死亡し、6千人以上が負傷している。多くが一般住民だ。これ以上、非人道的な攻撃を続けることは許されない。

 国連安全保障理事会は28日未明に緊急会合を開き、即時無条件の人道停戦を呼び掛ける議長声明を発表した。「深刻な懸念」を表明したが、拘束力の強い決議ではなく、格下の議長声明にとどまり、イスラエル、イスラム原理主義組織ハマスのいずれに対する非難も盛り込んでいない。オバマ米大統領はイスラエルのネタニヤフ首相との電話協議で即時無条件の人道停戦を促した。しかし同時にイスラエルに自衛権があることを再確認しており、攻撃を正当化している。中東最大の同盟国に言葉だけの停戦を求めただけではないか。これでは実現するはずもない。
 議長声明が発表された28日はくしくも第1次世界大戦の開戦から100年の節目の日だった。100年後のガザ市では28日、難民キャンプで爆発があり、子ども8人を含む計10人が死亡した。なぜ軍事施設でもない難民キャンプが攻撃されなければならないのか。無差別テロと何が違うのだろう。
 ローマ法王が開戦100年を迎え「過去の過ちを繰り返してはならない。(戦争を)やめてください。お願いです」と訴えた。世界の市民の声を代弁した言葉だ。
 日本も傍観者ではいられない。安倍政権は4月、武器輸出三原則を全面的に改め、武器や武器技術の禁輸政策を撤廃し、輸出拡大に道を開いた。日本が米欧との共同開発に参画したF35戦闘機はイスラエルにも納入予定だ。日本が共同開発した戦闘機がガザの住民を殺害することになれば、日本は殺りく行為に加担することになる。武器輸出三原則撤廃を見直すべきだ。
 戦闘はこの6年足らずで3回目となった。イスラエル、ハマスの双方とも、戦闘では憎しみと暴力の循環を断ち切ることができないことを認識すべきだ。そして国際社会はこれ以上の住民犠牲を出さないためにも、自国の利害を超え、早期停戦を実現するために力を合わせるべきだ。