観光客1220万人 量と質満たす観光振興を


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 県は2021年度の観光客を1千万人、観光収入を1兆円とする目標を達成するための行程表(ロードマップ)の「基本的考え方」を了承した。この中で21年度の観光需要予測を1220万人とする「成長モデル」を新たに提示した。

 「成長モデル」は近年の観光客数の増加を反映させたもので、テーマパーク誘致などの施策を前提としている。今後7年間で、現在の2倍の観光客を見込むという予測を精査するには過去の観光施策の検証が重要だ。
 観光客1千万人という目標設定は06年の県知事選にさかのぼる。仲井真弘多知事はこの年の県知事選で、10年後の観光客数を1千万人とする公約を掲げた。
 2016年、すなわち再来年が目標年だが、達成には程遠い。新たな「成長モデル」は公約が実現できないことをうやむやにするものであってはならない。有権者との約束がより重要であろう。なぜ達成できないのか、きちんと検証し、真摯(しんし)に反省すべきだ。
 目標が過大だった点はなかったか。非現実的な目標を掲げるあまり、達成のための行程も非現実的になったのではないか。そうした検証が必要だ。
 観光客の数を求めるだけではなく、観光客の満足度を高めるための取り組みも不可欠だ。沖縄観光に関しては「量だけではなく質の充実を」という指摘が繰り返されてきた。いたずらに入域客の数を追い求めるのではなく、観光収入、すなわち県内へ落ちる付加価値の増大を求めるべきではないか。そのためには観光収入を目標にしていい。人数に宿泊日数を掛けた「人泊」を目標に設定することも検討すべきだ。
 一方で、地域行政や観光産業、さらには住民も参加した「着地型観光」の振興を追求したい。地域経済の活性化につながるはずだ。伊江村などが推進する民泊事業、那覇市や沖縄市の街歩き観光は先駆的な取り組みだ。いずれも住民が重要な役割を担い、観光客を受け入れている。
 1日から観光月間が始まった。観光庁の13年宿泊旅行統計調査によると沖縄の延べ宿泊日数の伸び率は全国1位だった。観光客の満足度は96・3%という県調査もある。好材料を生かし、沖縄の経済自立を支える観光産業の底上げを図りたい。そのためにも、県民の理解と観光客を温かく迎えるホスピタリティーが大切だ。