NIE全国大会 民主主義の担い手育てよう


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 児童・生徒が新聞に親しむことにより、自ら考えて意見を持ち、行動する-。その意義を全国の教育関係者が深く掘り下げた。

 「よき紙民になる~子どもに意欲を持たせるNIE活動」をスローガンに、第19回NIE全国大会徳島大会が7月31日から8月1日まで開かれた。
 「紙民」は新聞を読み解き、主体的に行動する人々を表す。「市民」と掛けた造語だ。子どもたちが社会で起きる問題に関心を持ち、知恵を出し合って解決に当たり、「民主主義を支える良き市民に育ってほしい」という願いが込められている。
 大会の討論や公開授業、分科会を通し、民主主義の担い手を育てるNIE活動の意義をかみしめる実践的活動を共有した。教育関係者と新聞作りの担い手が、県内の学校や家庭での活用方法をさらに進化させる決意を新たにしたい。
 基調提案した徳島県NIE推進協議会長の原卓志氏(鳴門教育大教授)は「学びの意欲を広げる原動力は、新聞が身近で特別な存在になること。『親しみ』からそれは生まれる」と強調した。
 シンポジウムでは、子どもに意欲を持たせるNIEを議論した。徳島市立佐古小の藤田賀史教諭は「大人が読む難しいイメージを崩す意識を持ち、教師がきっかけを提供することが大切だ」と述べた。
 「子どもが主役のNIE」を考える上で、「親しむことが出発点」という発想とともに、実践への示唆に富んだ発言である。
 NIEは「Newspaper in Education」の略で、「教育に新聞を」と訳される。70カ国以上で実践されている。
 考え、生きる力を育むNIEは、試験ですぐに結果が出るものではない。だが、取り組んだ教師には、児童・生徒の思考力、文章表現力、意見を発表する力などが伸びたという確かな手応えがある。
 経済協力開発機構(OECD)が2009年に65カ国・地域の15歳を対象に実施した「学習到達度調査」によると、新聞を月に数回以上読む日本の生徒の読解力は、1回以下の生徒を大きく超えた。
 他国の傾向も同様である。学力への好影響も証明されている。
 NIEアドバイザーを務める教師らの奮闘により、県内でもNIEの裾野は広がっている。児童・生徒に親しみやすく、信頼度の高い紙面作りに一層努めたい。