宜野座墜落1年 基地立ち入りを保障せよ


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 住民の暮らしと直結する生活用水供給の重要性から目を背けている。米軍は既得権益を振りかざし、嫌がらせに近い理不尽な対応を取っているのではないか。

 宜野座村の米軍キャンプ・ハンセン内で、米空軍嘉手納基地所属の救難ヘリコプターが墜落した事故から1年がたった。宜野座村による現場確認を米海兵隊が許可せず、現場に近い大川ダムの取水が滞っている。
 同ダムは村民が利用する飲料水の約3割の供給源だ。米軍は立ち入りを直ちに許可すべきであり、自治体の要求通りに立ち入りを保障する制度の確立を求めたい。
 米軍は事故直後に「環境に異常はない」と発表しながら、ことし2月になって環境基準値の74倍の鉛や21倍のヒ素が検出されたと発表した。「弾薬由来」と説明したが、村民は不安を抱いている。
 村、県、米軍が土壌や地下水を調査し、6月に有害物質などの数値が正常値を示した。當真淳村長らが現場で安全性を確認し、ダム取水を再開する段取りだ。
 だが、米軍はその後も立ち入り可否の回答を示さず、村は実害を被っている。漢那ダムからの取水を増やしたため、ポンプの燃料代などで約600万円を支出し、日々それが膨らんでいる。
 墜落現場で焼失した宜野座区の立木の補償額も算定できず、5月末に米軍の工事による赤土流出が確認された潟原ダム近くへの立ち入りも認められていない。
 基地負担軽減の一環として、1996年に環境汚染が発覚した際の自治体の立ち入りを認める日米地位協定の運用改善がなされたが、拒否が相次ぎ、許可されたのは数えるほどだ。米軍が恣意(しい)的に立ち入りの可否を判断できる現行制度に根本的問題がある。日本側の立ち入り権は有名無実化している。
 ハンセン基地内の宜野座村域には五つのダムがあり、その保守点検は生活用水の安全性確保に直結する。しかし、ダムの定期点検、観光目的の湖面使用も米軍が認めない限り実施できない状況が続く。
 緊急性が高いダムの取水再開に向けた立ち入りさえ認められない状況で、岸田文雄外相は返還前の在日米軍基地内への立ち入りを定める日米の新協定を9月までに締結する見通しを示している。
 米軍の裁量権にどう風穴を開けるのか。これまで同様な見掛け倒しの対症療法は願い下げである。