集団的自衛権 法案審議の前に審判仰げ


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 国の在り方をめぐる最も根本的な規定を一内閣の解釈で変えてよいのか。そのことの不当性をあらためて裏付けたといえよう。

 2、3日に実施した共同通信の全国電話世論調査で、集団的自衛権の行使を容認する解釈改憲の閣議決定について、賛成が31%なのに対し反対は60%に達した。
 国民の大多数が反対することを、内閣が勝手に決めたことを雄弁に物語る。しかも1カ月前に比べ賛成は3ポイント余減り、反対は6ポイント近く増えた。反発は薄れるどころか強まっているのだ。民意不在の強権政治は許されない。早急に信を問うべきだ。
 集団的自衛権の行使とは、自国は攻撃されていないのに他国の戦争に参戦すること、すなわち「売られてもいないケンカを買って出る」ことである。戦争に巻き込まれる危険が飛躍的に高まるのは火を見るより明らかだ。
 今回の世論調査では20~30代の若年層で反対が7割に上った。1カ月で18ポイントも上昇している。戦争になって命を失う危険がより切実な世代だ。その切実性に照らせば、懸念はうなずける。
 世論調査で賛否の一方が7割にも達するのは異例である。ほぼ総意だと言ってよい。
 閣議決定は国会閉会後だった。反対が特定の世代の総意であるような事案を、しかも国の根本にかかわる事案を、何ら国民の前で議論することなく、内閣が勝手に決めたのである。世論の賛否に照らしても、手続きの妥当性の面でも、明らかに不当だ。
 調査では解釈改憲が「説明不足」との回答も84%に上った。だが、それをもって「国民の理解が進んでいない」と評するのは誤りだ。若年層の回答にも表れているように、国民はその危険性を十分理解した上で賛否を示したのであろう。
 集団的自衛権の容認をめぐる関連法制の審議は来年の通常国会と目されている。法制整備に裏打ちされて初めて、解釈改憲は実効性を持つことになる。裏返して言えば、効力発揮を止めることはまだ可能なのだ。
 政府・与党は、行使容認が妥当だと思うのなら、早急に解散して国民の審判を仰ぐべきだ。総選挙で堂々と公約の筆頭に掲げ、国民の賛同を明示的に得た上で、法制整備に着手すればよい。逆に容認すべきでないとの審判が下るなら、新しい内閣はあらためて行使を容認しない憲法解釈を明示すべきだ。