泡盛世界遺産 「黒麹菌文化」を誇ろう


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 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界無形文化遺産への黒麹(こうじ)菌を使った琉球泡盛の登録を目指す準備委員会が発足した。

 無形文化遺産は世界遺産や記憶遺産と並ぶユネスコの遺産事業の一つだ。実現すれば「君知るや名酒泡盛」が世界に知れ渡ることになり、観光を含め波及効果は計り知れない。まず県内で登録の機運を高めたい。
 黒麹菌は世界を見渡しても沖縄諸島、先島諸島だけに分布するといわれる。約460年前にタイから伝わった南蛮酒が琉球で黒麹菌と出合い、泡盛が生まれた。
 黒麹菌は酒の製造過程で大量にクエン酸を生産する。この酸が亜熱帯の多湿な沖縄で雑菌による腐敗を抑え、安全に酒を醸造することができる。琉球の知恵と発想が生んだ蒸留酒だ。
 黒麹菌を使った酒は世界で唯一泡盛だけだ。ラフテーや豆腐よう、コーレーグースなど泡盛を使った琉球独自の食文化とともに、これらの黒麹菌文化は世界に誇っていいだろう。
 2013年の泡盛出荷量は前年比22%減の2万673キロリットルと9年連続で減少した。ピーク(04年)の4分の3に落ち込んでいる。国内の酒類市場は縮小傾向にあり、若者のアルコール離れが指摘される。
 泡盛は県内で4分の3が消費される。落ち込みを止めるためには県外、特に海外市場へ売り込む必要がある。ところが輸出は全体の0・1%に満たない。輸出先も台湾、香港、シンガポールなどアジアが中心だ。世界遺産に登録されると海外で泡盛の認知度が一気に高まるだろう。波及効果は計り知れない。
 世界遺産登録の効果に期待するだけでなく、若者層や女性向けに泡盛を使ったカクテル、炭酸割りなど新しい飲み方の提案や、商品開発の努力がさらに求められる。
 観光客が増加する一方で、泡盛の魅力のPRが不十分との指摘がある。ホテル協会や沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)と連携した取り組みが必要だ。
 世界遺産に登録されると泡盛だけではなく、琉球の食文化が世界に認められることになる。県が目標に掲げる観光客1千万人にも大きく寄与するだろう。
 沖縄が誇る琉球泡盛と食文化の世界遺産登録実現に向け、県全体で機運を盛り上げたい。