ストーカー厳罰化 加害者治療も法制化を


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 ストーカー対策を議論してきた警察庁の有識者検討会は、ストーカー規制法の罰則強化や禁止命令手続きの簡略化などを求める報告書をまとめた。

 ストーカー被害は、凶悪事件に発展するケースが後を絶たず、対策は後手後手に回っているのが現状だ。昨年10月には東京・三鷹で女子高生が殺害されたほか、今年2、5、6月にも殺人事件が発生した。
 警察庁は報告書を踏まえ、議員立法で成立した規制法の改正も視野に、関係国会議員らと協議を進める方針だ。関係する省庁や機関とも密接に連携し、実効性の高い防止策を一日も早く構築してもらいたい。
 報告書は、LINE(ライン)などインターネット交流サイト(SNS)を使って執拗(しつよう)にメッセージを送り付ける行為や、被害者の自宅や職場の周辺をうろつく「徘徊(はいかい)」も新たに法規制の対象とすべきだと提言した。被害の実態に即した包括的な規制は急務といえる。
 現行法の罰則は、最大となる禁止命令違反が1年以下の懲役または100万円以下の罰金-などとなっており、被害者からは厳罰化を求める声が強かった。
 実際、昨年4~6月に同法違反容疑で逮捕された85件のうち、実刑判決はわずか4件だけ。多くの加害者は執行猶予や罰金刑などで短期間で釈放されるため、被害者は行為の再発や報復を恐れ、訴えに消極的になる実態もあるという。
 もちろん、罰則を重くしたからといって、犯罪抑止効果に限界があることにも留意が必要だ。
 昨年1年間に警察が把握したストーカー被害は初めて2万件を超えた。約8割は警告で付きまとい行為をやめるが、残りの一部が凶悪事件を引き起こすという。精神医療の専門家は、違法だと認識しつつもやめられない加害者を「ストーカー病」と呼び、治療の必要性を強く訴えている。
 今回の報告書も加害者対策を盛り込んだが、「更生プログラムの実施を検討すべきだ」との提言にとどまった。警察庁は本年度から加害者に精神科医の診察を受けるよう促す試みを始めているが、相次ぐ凶行を食い止めるためにも加害者治療の法制化など具体策は待ったなしだ。
 一方、報告書が指摘するように被害者支援も機能拡充が不可欠だ。警察任せではなく、自治体や法テラス、婦人相談所など社会全体が連携した仕組みづくりを急ぎたい。