有所見率全国最悪 オール沖縄で改善取り組め


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 2013年に県内事業所の定期健康診断で「異常」が見つかった労働者の割合「有所見率」が、3年連続で全国ワーストとなった。

 県内では高齢者の死亡率は全国平均を下回るが、20歳から64歳までの勤労者世代の死亡率は高いと言われる。
 この状態を放置すれば、勤労者世代の健康水準が深刻な状態に落ち込みかねず、沖縄の健康長寿を取り戻すことなどおぼつかない。
 労働者それぞれの意識を高めることはもちろんだが、企業、地域、県民挙げて健康づくりに取り組む必要がある。
 健診項目別では、血中脂質検査、肝機能、血圧検査の順で高かった。いずれも生活習慣病の要因とされる項目だ。
 かつて健康長寿だった高齢者世代と、いまの勤労者世代では食生活や生活様式が大きく異なる。
 米国支配下の脂質文化と、本土からの塩分文化が県民の平均寿命を引き下げた。その上に自動車の普及で、歩かない県民性が定着した。夜型社会は大量飲酒にもつながりかねない。
 県民の健康水準の低下は、数十年にわたる食生活と生活様式の変化が影響している。その改善は個人頼みでは限界があり、社会運動として取り組む必要があろう。
 受け皿となるのは、4月に発足した「健康長寿おきなわ復活県民会議」と言える。県、経済団体、医療団体など71団体で構成されるオール沖縄の組織だ。
 生活習慣改善のための行動指針として打ち出した肥満解消、適正飲酒など企業も巻き込んで効果的に呼び掛け、県民一人一人に実行を促してもらいたい。県民会議が目指す2040年に都道府県別平均寿命の首位奪還への一里塚になる。
 県内では労働者の大半が50人未満の小規模事業所で働く。しかし、産業医、保健師が配置されておらず、労働者の健康状態が十分把握されていないといわれている。
 労働者の健康を大事にすることが生産性の向上につながるという「健康経営」という考え方がある。
 企業がより積極的に労働者の健康管理に関与するのは時代の要請とも言えよう。健診で異常が見つかったなら、企業の責任として労働者を受診させることが大事だ。
 即効ある処方箋はない。適正飲酒を心掛け、地道に着実に肥満解消に取り組むしかない。