<社説>ヘリ墜落10年 海兵隊は全面撤退を 県内移設は許されない


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 沖縄国際大学の校舎に海兵隊のCH53D大型輸送ヘリが墜落してから、きょう8月13日で10年を迎えた。隣接する米軍普天間飛行場では現在、墜落事故を繰り返してきた垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ24機が常駐し、昼夜問わずごう音を立てながら離着陸を繰り返し、本島をくまなく飛行している。県民が危険な空の下での暮らしを強いられている状況は10年たっても一向に変わっていない。

 
年に1機以上墜落

 1972年の復帰から現在までに県内で発生した米軍機の墜落事故は45件ある。沖国大の事故の後にも4件発生している。
 復帰後の沖縄では年に1回以上、米軍機が墜落していることになる。いつになれば県民が安心で安全な暮らしを送ることができるのだろうか。
 琉球新報が事故10年で実施した県内市町村長へのアンケートでは、回答した30首長のうち「海兵隊の沖縄駐留は必要だ」と答えた首長は一人もいなかった。10人が海兵隊の日本駐留の必要性を否定し、9人が沖縄駐留を否定した。「その他」と答えた9人の大半も沖縄駐留に疑問を唱えている。多くの首長が考えているように、沖縄に海兵隊が駐留する必要などない、と断言したい。
 民主党政権時に森本敏防衛相は海兵隊の普天間飛行場の移設先について「軍事的には沖縄でなくてもよいが、政治的に考えると沖縄が最適」と述べた。これを裏付ける動きが最近あった。
 政府が普天間飛行場のオスプレイを佐賀空港に暫定移駐させる計画を提案したことだ。米側が難色を示したため、当面見送る方針のようだが、普天間の機能を県外に移駐できることを政府自身が示したことになる。

駐留理由は幻想

 米側が佐賀空港への暫定移駐を「現実的でない」とする理由に挙げるのが、隊員と家族が暮らす宿舎と訓練に使用している北部訓練場が沖縄にあることだという。裏を返せば、訓練場と宿舎を整備すれば普天間飛行場の県外移設は可能だということだ。
 空港と訓練場を備えた自衛隊施設を利用すれば、県外にはいくらでも候補地は見つかるはずだ。沖縄駐留の理由に挙げられていた軍事上の「地政学的優位性」は幻想であることをあらためて示している。
 防衛省が在沖米海兵隊の駐留意義などをまとめた冊子「在日米軍・海兵隊の意義及び役割」では抑止力の根拠とする沖縄の位置について「朝鮮半島や台湾海峡といった潜在的紛争地域に近い(近すぎない)位置にある」と説明している。「近い(近すぎない)」などと沖縄に基地を置くためだけの詭弁(きべん)としかいいようがない主張はすでに論理破綻している。
 米国は沖縄に駐留させている海兵空陸任務部隊(MAGTF)をグアム、オーストラリア、ハワイに巡回配備する方針だ。部隊は司令部、地上戦闘、航空戦闘、後方支援の各部隊で構成され、キャンプ・ハンセン、普天間基地、牧港補給地区の兵員で組織される。
 米国が巡回配備を考え始めたのは中国の弾道ミサイルの射程外への部隊配置でリスクを低減させるためだ。米国はいっそのことミサイルの射程内にある沖縄から全部隊を撤退させたらどうか。
 政府は現在、普天間の名護市辺野古への移設作業を進めている。11日にはキャンプ・シュワブに浮桟橋が再設置されており、近く海底ボーリング調査実施のための浮具(フロート)と浮標灯(ブイ)の設置作業に踏み切る。
 琉球新報の4月の世論調査では74%が辺野古移設に反対している。大多数の県民の声に耳を傾けぬまま、移設を強行することは民主主義国家として許されることではない。即座に中止すべきだ。
 沖縄の海と空は県民のものだ。日米両政府は沖縄から海兵隊を全面撤退させる道を真剣に考える時期に来ている。
英文へ→[Editorial]10th anniversary of US chopper crash onto Okinawa International University: Marine Corps should be withdrawn from Okinawa