<社説>辺野古掘削開始 自然破壊恥じぬ政府の厚顔

 あの美しい海に、ついに穴がうがたれた。

 18日、米軍基地新設に向けた調査のため、名護市辺野古の海の掘削を防衛省が始めた。県民の民意を踏みにじる反民主主義、自然環境を破壊して恥じない反理性主義と、いかなる意味でも許されぬ暴挙だ。遺憾だという常套句(じょうとうく)では足りぬ、強い憤りを禁じ得ない。
 辺野古沖、大浦湾に通ったことのある者は分かるはずだ。あの透き通った水とサンゴの美しさは何ものにも代え難い。まして絶滅危惧種のジュゴンが前日も近くを泳いだばかりだ。作業におびえて近づけなかったとおぼしい。そこに強権的に穴をうがち、平然としていられる政府の厚顔は信じがたい。
 その命湧く海の貴重性は専門家がつとに指摘している。日本自然保護協会はわずか10日の調査で36種の未記載種、25種の日本初記録の甲殻類を発見した。シャコ、ナマコ、海藻と他にも初記録は枚挙にいとまがない。世界で他に報告のない大規模なアオサンゴ群集があり、サンゴ礫(れき)が付着する洞窟も日本初確認だ。その生物多様性に鑑みれば、本来なら政府が率先して海洋保護区に指定すべき海だ。その海をどうして破壊できるのか。
 安倍政権には、11月の知事選の前に工事を進捗(しんちょく)させ、既成事実化を図る狙いがあるとされる。「抵抗しても無駄だ」と県民に無力感を植え付けるのが狙いなのだろう。
 だが防衛省の作業にはほころびも目立つ。2004年には63カ所を予定していた掘削が今回は3分の1の21カ所になり、さらに5カ所を割愛した。作業を速やかに終えたいがあまり、無理に無理を重ねている様子がうかがえる。
 本体工事に先立つ調査段階ですらこうだ。まして本体工事は、作業ヤード設置や県管理港湾、道路の使用など、いくつもの県レベル、市レベルの許認可が求められる。焦りを募らせ、追い詰められているのは政府の方ではないか。
 沖縄側が無力感にとらわれる必要はない。沖縄に対し日米両政府が取っている姿勢は近代以前の専制君主的反民主主義だ。沖縄は民主主義的手段で民意をはっきり示し、国際社会に堂々と訴えればよい。国際社会の良識がどちらを支持するかは火を見るより明らかだ。
 沖縄の海に穴をうがつか否か、沖縄の土地に軍隊を置くか否か、決めるのはウチナーンチュである。



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