<社説>介護囲い込み 公正・中立の基準明確化を


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 高齢者介護の公的な相談窓口として全国に設置されている「地域包括支援センター」で、市町村から運営委託を受けた社会福祉法人や医療法人などが利益獲得のため、自らが運営する介護保険サービスに利用者を事実上、誘導するケースが都市部を中心に全国で問題化していることが明らかになった。

 厚生労働省は通知でセンター運営について「公正・中立」をうたうが、経営を優先した利用者の「囲い込み」は、センターの設置理念に反する背信行為にほかならない。超高齢社会に向けた公的な中核機関として、地域でお年寄りの生活を支えるセンターの存在意義にも疑義を生じさせかねない事態といえる。
 国、県、各市町村はそれぞれセンター運営の実態把握に努め、囲い込みなど運営法人への利益誘導がある場合は、直ちに是正を図るべきだ。
 介護予防プランの作成をはじめ、高齢者虐待など権利擁護にも取り組む地域包括支援センターは全国に約4500カ所あるが、約3割が市区町村の直営で、残り約7割は社会福祉法人などに運営が委託されている。県内には56カ所あるが、7割の39カ所が市町村の直営で、残り3割の委託は那覇市(12カ所)宜野湾市(4カ所)浦添市(1カ所)の17カ所となっている。
 囲い込みがあるのは地域差が大きく、全国でも県庁所在地など都市部に集中しているという。
 県高齢者福祉介護課によると、囲い込みなどに関する同課への苦情や相談はこれまでないという。ただ、介護業界ではセンター批判がタブー視されているとの指摘もある。本土の事例を対岸の火事として、県内も安閑としてはいられない。県当局は市町村と連携し、地域の介護事業者からの聞き取りをはじめ、県内の実態把握に早急に取り組んでもらいたい。
 全国で「囲い込み」が問題化している背景には、厚労省通知の「公正・中立」について、明確にチェックする基準がないことも原因とされる。介護保険サービスの割り振り状況の公開や、事業者に偏りがないかといったチェックを自治体に義務付けるなど、囲い込み解消には事業の透明化が不可欠だ。
 センターの審議機関として自治体ごとに設置される運営協議会の形骸化も指摘される。厚労省は協議会の機能強化策をはじめ、実効性のある指針を早急に示すべきだ。