<社説> 辺野古県民集会 沖縄の民意を見誤るな


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 沖縄は何度こうした意思を表してきただろうか。日本が民主主義国であるなら、今からでも調査を中止する対応を取るべきだ。

 安倍政権が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けたボーリング調査を開始したことに抗議する県民集会が、辺野古のキャンプ・シュワブ前で行われた。2千人の予定を大きく上回り、主催者発表で3600人が参加し、工事の中止を訴えた。
 地元名護市が移設に強く反対する中、安倍政権は調査を強行した。11月の県知事選を前に既成事実化を図る狙いは明らかだ。選挙前に「諦め感」を与えようとする手法は、卑怯(ひきょう)と言わざるを得ない。選挙で堂々と移設の是非を問うのが民主主義の王道のはずだ。
 辺野古集会には家族連れや若者らを含む多くの人々が集まった。用意されたバスに乗れず、参加を断念したのも数百人以上いる。
 こうした沖縄の空気を首相官邸はどこまで理解しているのか。海上作業の準備が始まった7月以降、辺野古の海と陸では連日、市民が早朝から深夜まで抗議の声を上げている。ただ移設に反対しているのはその人々だけではない。
 ジュゴンがすむ豊かな海の埋め立てを、国家権力を総動員して推し進めるさまを、多くの県民が苦々しく、怒りをもって見守っている。1週間程度の準備でこれほどの人々が参加した集会の熱気が、そのことを如実に物語る。政権の対応次第で抗議行動はさらに広がろう。
 そもそも名護市長選で2度、移設反対の民意が示されている。それを無視して移設手続きは進められているが、県民は同意していない。世論調査では約8割が辺野古移設に反対している。政府が移設作業の根拠とする仲井真弘多知事の埋め立て承認には、県民の7割以上が県外移設公約に違反すると答え、批判は収まる気配がない。
 県民の反対に関し、安倍政権は「粛々と工事を進める」(菅義偉官房長官)として知事選結果に関わらず移設を強行する構えさえ見せる。言語道断であり、民主主義国としてその野卑な言動を恥じるべきだ。
 「県民に主権はあるのか、基本的人権は尊重されているのか」。安倍晋三首相は集会アピールに込められた県民の思いを受け止め、事態の深刻さを直視すべきだ。沖縄の民意を見誤るべきではない。作業を即刻中止し、計画見直しの英断へ踏み出すべき時期に来ている。