<社説> ギャンブル依存症 対策講じて悲劇をなくせ


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 日本は「ギャンブル依存症大国」と呼ばれても過剰ではない。

 厚生労働省の研究班が、ギャンブル依存症の疑いのある成人が536万人(4・8%)に上るとする推計値を発表した。
 成人男性の8・7%、女性の1・8%に依存症の疑いがある。
 米国(1・58%、2002年)韓国(0・8%、08年)など諸外国に比べ、日本の割合の高さは突出している。
 個人の問題とされがちだったが、実態は深刻の度を増している。秋の臨時国会で始まる「IR推進法案(カジノ法案)」の審議では、依存症問題を徹底論議すべきだ。
 専門家の間には、法案が成立すれば、依存症患者が増えるとの懸念が強まっている。
 ギャンブル依存症は病である。その予防や患者を支える態勢づくりは待ったなしの課題であり、社会全体で取り組まねばならない。
 ギャンブルに病的にのめり込み、衝動を抑えられなくなる依存症は、家庭崩壊や借金を重ねる多重債務の原因にもなり得る。悲劇をもたらすケースもある。内閣府の調査によると、依存症の人はギャンブルをしない人より自殺のリスクが4~20倍も高い。世界保健機関(WHO)は「病的賭博」と呼び、精神疾患に位置付けている。
 遊技場の駐車場の車中に残された乳幼児が死亡したり、会社の金を使い込む事件の背景に、ギャンブル依存症が潜むケースが多いことが指摘されている。本人が賭け事に依存していることを問題と思わず、周囲が気付きにくい。家族にも病気の認識が薄いことがギャンブル依存症の大きな課題だ。
 海外ではカジノ設置を特定地域に限定しているが、日本は市民が接しやすい所に店舗や競馬場などがある。研究班はこうした環境が依存症の割合の高さにつながっていると分析している。
 社会の懸念をよそに、安倍政権はカジノとホテルが一体となった「複合型リゾート」施設の整備を解禁しようとしている。
 それを受け、仲井真弘多知事が県内へのカジノ誘致に強い意欲を示している。
 県民の間にカジノに対する根強い警戒感がくすぶり、賛否が割れている。にもかかわらず、知事は他の自治体との先陣争いに加わるため、県民のコンセンサスを得ずに誘致を既成事実化しようとしている。安倍政権によるカジノ推進と知事の誘致は性急に過ぎる。