<社説>障害年金 不当な抑制やめ平等支給を


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 住む場所で公的な扱いが異なるのは、明らかに「法の下の平等」に反する。法治国家でこのような現状の放置は許されない。

 障がいがある人が受け取れる国の障害年金について、支給・不支給の判定が都道府県によってばらつき、不支給となる割合に大きな差があることが判明した。最大で6倍以上の差があるというのだから、自然発生的な差ではあり得ない。受給できるはずの障がい者が多数、対象外になっていると疑われる。
 判定が客観性を欠くのはもはや明らかだ。地域で有意差がある現状は改善が急務である。国は早急に客観性を担保した判断基準をつくり、自治体に周知すべきだ。
 不支給率は最も低い栃木で4・0%であるのに対し、最も高い大分では24・4%にも達した。
 社会保険労務士の間では、以前から地域による判定基準の違いがささやかれていた。それがデータとしてはっきり表れた格好だ。
 審査に当たる医師(認定医)に個人差があり、特に精神、知的障がいの分野で判断が分かれやすいという。基準の客観性・公正性を高める必要があろう。申請1件につき認定医が1人という構造も問題だ。複数の医師に判断を仰ぐ仕組みの導入も検討すべきだろう。
 沖縄も17・6%と全国で7番目の高さだ。受給できるはずの人が相当数、泣き寝入りしているのではないか。県内障がい者の不利益を急ぎなくすため、県は早急に実態調査をしてもらいたい。
 不支給の割合は最近、急激に高まっている。全国平均では2010年度に10・9%だったものが、わずか2年後の12年度には13・7%へと3ポイント近くも上昇した。埼玉や千葉では2年で2倍になったというから、異常と言うほかない。
 精神、知的障がい者用の診断書に就労状況を記載する欄が11年度に設けられたことが原因だろう。厚労省は「就労の支援状況を把握するのが目的で、就労の事実のみで安易に不支給にしない」と説明するが、詭弁(きべん)に聞こえる。支給しない理由に使われているとしか思えない。
 厳しい年金財政を受け、できるだけ障がい者に年金を出したくないという国の大きな意思が反映している。そう見るのが妥当だろう。だが憲法は、あらゆる人に「健康で文化的な生活」を保障する義務を国に負わせている。その重みを国はかみしめるべきだ。