<社説>小学順位向上 長期的な実力につなげたい


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 小学6年生と中学3年生を対象に実施した2014年度全国学力・学習状況調査(学力テスト)で県内の小学生の算数Aが6位となり、前年度の最下位から順位を41位上げた。国語A・Bはそれぞれ32位、算数Bは34位で、07年度の調査開始以来初めて全教科で最下位を脱出し、全教科総合で24位となった。

 県内の教育現場では近年、学力向上のためのさまざまな取り組みが重ねられてきた。今回の小学生の順位向上はこうした努力の結果だと評価したい。
 ただ中学生は7回連続全教科最下位だった。平均正答率の全国平均との差が初めて全教科で10ポイント以内に入るなど改善は見られるが、学校教育、家庭教育双方の課題について検証を進める必要がある。
 県教育委員会は学力テスト改善のため、全国1位の秋田県との教員人事交流を進め、13年度には学力向上推進室を設置して指導主事が小学校120校を訪れて直接指導する支援訪問を実施した。
 14年度からは県学力向上ウェブシステムを活用し、年9回の小テストの結果を自動分析して学校の課題を浮き彫りにして指導につなげている。秋田県や順位を大幅に上げた高知県も同様のシステムを導入しており、こうした取り組みが小学生の順位を引き上げる結果になったと見ていいだろう。
 その一方で、学校教育が学力テスト対策ばかりに重きが置かれているとの懸念が現場から聞こえてもいる。1~4月に学力テスト対策の時間を確保するため、学校行事の簡素化が進められているという。運動会は練習時間の少ない競技中心になったり、学芸会を年内に終わらせたり、家庭訪問を4月ではなく夏休みにずらしたりする変化も起きている。
 テストの過去の問題を解かせることに時間を取られ、本来の授業進捗(しんちょく)に遅れが出ている例もあるという。順位引き上げだけに目を奪われ、学校運営にひずみが生じるとしたら本末転倒だ。均衡の取れた丁寧な学校運営が必要だ。
 今回の結果について専門家は、平均正答率が2ポイント異なるだけで順位が20位ほど変動が出ることを踏まえ「順位で一喜一憂することはあまり意味がないといえる」と冷静な見方をしている。今回の結果を踏まえ、今後は学校、家庭双方で長期的・安定的な実力につながる対策を考えたい。