<社説>国保赤字問題 国は早急に制度見直しを


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 県内市町村の国民健康保険(国保)財政が悪化している問題で、県や市町村などが政府に制度の見直しを求めた。財政悪化は沖縄戦に起因しており、政府は制度を早期に是正すべきである。

 国保財政の悪化は、沖縄戦で多数が犠牲になったため人口に占める前期高齢者(65~74歳)の割合が全国平均の半分程度にとどまることが要因だ。前期高齢者の割合によって配分される交付金が県内は少ない。
 県内11市でつくる県都市国保研究協議会の試算によると、前期高齢者の割合が全国並みの場合、11市の交付金は123億円余り増える。11市の国保赤字額は2012年度で74億円だから、赤字を補って十分お釣りが来る計算になる。
 実際には前期高齢者が増えた分に伴う支出増も想定されるため、単純には計算できないが、協議会は「前期高齢者が全国並みの加入率なら、赤字を圧縮する分の交付金が入っていた可能性は高い」と話している。説得力がある。
 県の新たな試算では、全国並みの加入率を全県に当てはめると、41市町村全体で交付金が166億円増える。県内1人当たりの国保医療費は全国で最も少ない半面、国保税の収納率は12年度で全国9位と高い。全国並みの人口構成なら、国保財政は健全な状況になっていたのはほぼ間違いない。
 前期高齢者世代は沖縄戦当時で0~5歳だ。苛烈(かれつ)な地上戦で多くの乳幼児や、その親となる世代が多数命を落とした。国策で引き起こされた戦争の結果、沖縄が不利益を受ける構図はどう考えてもおかしい。当然改善されるべきだ。
 財政支援要請をめぐっては市長会などが主導して検討が進められ、最終的には県も加わって政府に申し入れた。沖縄戦という特殊要因に起因するだけに県と市町村が一体で実現を迫るべきだが、政府は既に特定の地域向けに国保財政の支援策を講じた事例がある。
 東日本大震災で被災した東北3県では失業などで社会保険から国保に移る人が急増した影響で、交付金が減少した。これに対し政府は13年度から3県の47保険者に支援策を実施している。沖縄にも参考となろう。
 沖縄の要請に対し、政府は医療保険制度改革と併せて対応し、今月末の来年度予算概算要求までに方向性を出す考えも示した。検討作業を急ぎ、県民が納得のいく改善策を早期に示してもらいたい。