<社説>奨学金制度 給付型に転換すべきだ


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 文部科学省は大学生や専門学校生への奨学金の無利子枠を3万人分増やす方針を固めた。

 低所得世帯の子どもに対する経済的支援を拡充して家庭の教育費負担を軽減し、経済的理由で進学を断念しないようにすることが狙いである。
 来年度予算で必要経費が認められれば、奨学金141万人分のうち無利子は47万1千人分となる。だが、その割合は30・8%から33・4%とわずか2・6ポイント増えるだけでしかない。
 これでは、経済的理由による進学断念を減らす効果は限定的で、抜本的な解決策にはならない。
 少子化の進展で「大学全入時代」と言われるものの、親の経済力によって進学率は違ってくる。大学や専門学校に進学する能力のある人の学ぶ機会が親の経済力の低さによって与えられないのは社会の在り方としておかしい。
 このような親の経済力からくる教育格差を放置すれば、日本の経済力、社会力が弱まるなど国造りに深刻な影響を及ぼすことになる。
 学びたい意欲を持つ人には、誰でも学ぶことができる機会を保証することは国の務めである。そのためには現在の奨学金制度を貸与型から給付型に転換し、多くの人に学ぶ機会を与えるべきだ。
 経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国のうち、大学生への給付型奨学金制度がないのは日本とアイスランドだけである。
 アイスランドは授業料が無償化され、大学院研究コースには給付型奨学金制度を設けている。日本は授業料減免しかなく、高等教育支援で世界に大きく後れを取っている。国はこの状況をいつまで放置するつもりなのか。
 安倍晋三首相は経済再生と並ぶ最重要課題として、教育再生を打ち出している。だが、愛国心教育の強制など国民が求める教育再生とは方向性が違う。給付型奨学金制度の創設など、学びに重きを置いた施策に力を入れるべきだ。
 安倍首相はことしの施政方針演説で「若者たちには無限の可能性が眠っている」と述べた。給付型奨学金は無限の可能性を秘めた若者たちを大きく後押しする。
 文科省は財務省の抵抗で給付型奨学金を断念したが、不必要な公共事業など無駄を削れば、必要な教育予算は確保できる。国際社会並みに教育予算を引き上げ、次世代の人材育成に力を注ぐべきだ。