<社説>DV被害宿泊補助 本年度から実施すべきだ


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 ストーカーやドメスティックバイオレンス(DV)への対策が急がれている。

 警察庁は被害者がホテルなどに一時避難する際の宿泊費を来年度から全額補助する方針を決めた。被害拡大防止に有効とみられるだけに、来年度まで待たずに補正予算を組んで本年度から実施すべきではないか。
 「被害拡大防止策」だけではなく「未然防止策」「再発防止策」「被害者支援策」など、関係機関が連携した幅広い取り組みが大切だ。
 昨年、全国の警察が把握したストーカー・DVの被害は計約7万件で過去最悪となった。沖縄はストーカー被害が155件(前年比67件増)、DV被害は656件(98件増)の計811件だった。
 東京都三鷹市で昨年、女子高校生が警察に被害を相談した日に殺害され、警察の対応の遅れが指摘されていた。被害者のうち1割強は緊急避難が必要だったが、避難を促しても費用がネックとなり応じない被害者もいたという。
 警察庁は宿泊費を全額補助することで、負担を感じずに逃げてもらい、その間に加害者を摘発し被害拡大防止につなげたい考えだ。担当する地方警察官も約2千人に増員し体制固めをする。
 ストーカー・DV行為が重大犯罪であることを認識させるために、警察庁の有識者検討会は罰則強化を求めている。
 被害者の半数近くを10~20代が占めた。このため警察庁は「未然防止策」として若者を対象としたDVDを作り、パンフレットを中高生に配布する。
 「被害拡大防止策」として、若者の間で急速に普及しているソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を使った付きまとい行為も規制対象にすべきだ。正当な理由なく被害者宅周辺をうろつく行為の規制も必要ではないか。
 「再発防止策」として、犯罪を繰り返す加害者への対策が指摘されている。被害をなくすためには新たな被害を生まないように加害者の更生が欠かせないからだ。精神科医による治療や効果的な更生プログラムを共有したい。
 性被害者を支援するワンストップ支援センターについて県は、2015年1月開設を目指す。前倒しが可能なら時期を早めてほしい。社会全体の取り組みで、ストーカー・DV被害を根絶したい。