<社説> 防災強化の道筋 備え尽くし「想定外」なくせ


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 8月は日本列島各地で豪雨災害に見舞われた。とりわけ、広島市の豪雨は大規模な土砂災害を招き、死者が72人に及ぶ大災害になった。

 「備えあれば憂いなし」。防災を考える上で、この格言の響きが格段に重みを増している。
 地球温暖化の影響により、本土で局地的な豪雨による大災害の頻度が高まっている。台風銀座・沖縄でもその危険性は変わらない。
 首都圏直下型や南海トラフの巨大地震以外に、日本海側でも甚大な被害を招く地震発生の可能性が指摘されている。
 過去の大災害の教訓を踏まえ、被害をゼロにできなくとも、少しでも抑える「減災」によって被害に遭う人を減らすことができる。
 災害を抑える備えの充実と共に、天候の急変など災害が避けられない緊迫した状況で、人命を守る迅速な指示を出す基準をどう定めるのか。防災対策の抜本的見直しが迫られている。
 1日は「防災の日」だった。90年前に関東大震災が起き、死者10万5千人を出した。南海トラフ巨大地震を想定した政府の防災訓練を皮切りに、5日までの防災週間中、全都道府県で訓練がある。
 想定を超えた被害が生じる芽を摘んでいるか。自らが住む地域の危険な場所や避難場所への道順をチェックすることも大切な備えだ。
 行政も、地域も、個人も当事者意識を持って検証し、「想定外」の事態をなくさねばならない。
 広島市の土砂災害で被害が拡大した要因として、土砂災害防止法に基づく警戒区域の指定が進んでいなかった点や、避難勧告の遅れがあった。
 これを受け、政府は法を改正し、地価下落などを懸念して警戒区域指定に二の足を踏む自治体があっても、国が都道府県に適切な対応を指示できるようにする。また、警戒情報を関係市町村に通知することも義務付ける。
 土砂災害から命を守るには、国主導への転換はやむを得まい。
 7月に台風8号が襲来して特別警報が出た際、県内で59万人に避難勧告が出たが、対応に戸惑った人が多かった。行政は避難可能な段階で、早めに判断を下すことが求められる。
 行政が救援態勢を整える「公助」の充実は不可欠だ。一方、非常事態に立ち向かって命を守る「自助」、地域のコミュニティーで助け合う「共助」の精神を再確認することも、防災強化の大きな道筋だ。