<社説> 子どもの貧困対策 画餅に終わらせるな


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 本気で子どもの貧困に取り組む気があるのだろうか。

 政府がまとめた「子供の貧困対策大綱」は、既存事業の寄せ集めと指摘される内容で、貧困問題を解決できるのか疑問だ。
 具体的な支援策は「努める」「検討する」の文言が目立つ。ひとり親家庭に支給する児童扶養手当や給付型奨学金の拡充も「検討する」として踏み込んでいない。
 子どもの貧困を改善した英国のように、具体的な数値目標を掲げて、実効性のある施策を示さなければ大綱は画餅に終わってしまう。
 子どもの貧困率は、平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子どもの割合を指す。2012年は6人に1人(16・3%)と、09年より0・6ポイント悪化し過去最悪だ。
 日本は経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国の中で25位(10年時点)と最低水準にある。
 貧困家庭の多くは、ひとり親世帯で、大半は母子家庭だ。母親は非正規労働者であるケースが多く、世帯収入がより低い傾向がある。
 沖縄は、ひとり親世帯率が全国平均の約2倍で、非正規労働者の割合は全国で最も高い。子どもの貧困問題は全国の中でも深刻だ。
 ひとり親家庭の場合、大学や専門学校に進学して勉強を続けたくても断念せざるを得ないこともある。進学を諦めた結果、希望の職に就けず、大人になっても貧しい生活から抜け出せない負のサイクルに陥ってしまう。
 例えば沖縄少年院を13年度に仮退院した46人の成育環境を分析した結果、生活保護レベルの困窮状態は全国平均の2倍強の60・8%。貧困と非行の関連性が浮き彫りになっている。
 日本は教育予算が先進国の中で最も少なく、教育を含む子どもの支援を家計に依存してきた。不況で正社員が非正規に変わり、収入が減ると、教育費の負担に耐えられなくなる。政治が解決しなければならない構造的な問題を抱えている。
 「貧困は、子供たちの生活や成長に様々な影響を及ぼすが、その責任は子供たちにない」。大綱の指摘はその通りだ。大綱は教育、生活、保護者の就労、経済の4分野の重点支援策を盛り込んだ。しかし、肝心の実効性があいまいだ。
 子どもの未来を約束する社会づくりこそ、政府が最重点に取り組む政策であるはずだ。