<社説>内閣改造 国民の批判に耳を傾けよ


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 安倍政権は今度こそ国民の声に真摯(しんし)に耳を傾けるようその姿勢を改めなければならない。

 安倍晋三首相は第2次安倍改造内閣を発足させ、併せて自民党の役員人事に踏み切った。女性閣僚を5人登用するなど清新さに腐心した一方、党人事では総裁経験者の谷垣禎一前法相を幹事長に据えた。派閥バランスに留意した布陣だといえる。
 首相には来年9月の総裁選をにらみ、政権運営の安定を図る思惑があろう。内閣改造に当たり、安全保障担当相を辞退した石破茂前幹事長との関係悪化が取り沙汰された。ベテランの起用には挙党態勢を再構築する狙いもありそうだが、首相と同様に保守色の強い稲田朋美氏を党政調会長に抜てきし、閣僚にも自身に近い人を多数起用している点は見過ごせない。
 野党は「右傾化がさらに進む」(桜井充民主党政調会長)と警戒している。安全保障や歴史認識などで国家主義的な主張を前面に打ち出す「安倍路線」が加速しないかと憂慮せざるを得ない。
 谷垣氏は党内リベラル派の宏池会出身だ。かつて軽武装・経済重視を掲げた宏池会など党内のハト派は安倍政権下で存在感を示せていないが、谷垣氏は「ブレーキ役」としての役割を自任してほしい。
 山口俊一氏が沖縄担当相に就任した。3年目となる現行振興計画や一括交付金制度の在り方で、なるべく多くの分野の関係者と直接意見交換を重ねることが重要だ。
 米軍普天間飛行場の辺野古移設計画を担う防衛相には江渡聡徳氏が就任、岸田文雄外相は留任したが、移設作業の旗振り役となっている菅義偉官房長官に「沖縄基地負担軽減担当」を与えたことは重大だ。悪い冗談だと言いたくなる。
 移設問題は11月知事選の最大の争点だが、菅氏は「選挙結果は移設作業に影響しない」との考えを繰り返し示している。そのような非民主的な態度が許されるのか。
 安倍政権は経済再生への期待を背に高い支持率を維持してきた半面、国民の多数が反対する中で特定秘密保護法の成立や集団的自衛権行使容認の閣議決定を強行してきた。
 普天間問題でも共通するのは、批判を受け止めない傲慢(ごうまん)な態度だ。景気は不透明感が増し、中韓両国との関係改善は見通しが立たない。国民、県民の声に耳を傾ける謙虚な姿勢がなければ、大きなしっぺ返しを食らうことに気付くべきだ。