<社説>デング熱感染拡大 温暖化防止に国は本腰を


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 デング熱の感染が約70年ぶりに国内で確認された。感染者は4日現在、12都道府県で計59人と広がりを見せている。

 いずれも東京・代々木公園周辺で、海外でデングウイルスに感染した人を刺したヒトスジシマカを通じて感染したとみられている。
 東京都が同公園で8月下旬に実施した調査ではウイルスを持つ蚊はいなかったが、3日に回収した蚊からウイルスを持つ蚊が初めて確認された。
 都は感染防止のため公園の北側を閉鎖したが、ウイルスを持つ蚊の生息範囲がさらに広がり、感染が拡大しないよう十分な対策を講じてもらいたい。
 県内では2010年、渡航先の東南アジアで感染したとみられる3人がデング熱を発症して以降、感染報告はないが油断は禁物だ。代々木公園で感染した人が県内を訪れる可能性は否定できない。
 蚊が好む木々が茂る場所にできるだけ近づかないことが必要だ。草木が多い場所に行く際は虫よけ剤を使い、長袖の服を着て蚊に刺されないようにするなどの自衛策を心掛けたい。
 デング熱に感染すると、高熱などの症状が出るが1週間程度で回復する。だが、まれに出血を伴って重症化して死亡することもあるから、デング熱を軽く見てはならない。
 実際、日本人観光客も多いタイでは昨年、約15万人が感染し約130人が死亡し、今年も8月末時点で約20人が死亡している。
 デング熱は熱帯地域の感染症と考えられてきたが、それは過去のことであることを認識しなければならない。
 地球温暖化の影響で、デングウイルスを媒介する蚊の生息地が北上し、日本でも1950年代には栃木県が北限だったヒトスジシマカの定着域が岩手県まで北上しているのが確認されている。
 温暖化対策を講じなければ、2080年代までに、デング熱に感染する恐れがある人は現状の25億人以上からさらに20億人増える恐れがあるとの予測もある。
 蚊はデング熱以外にも日本脳炎やマラリアなどのウイルスを媒介する。蚊の駆除に徹底的に取り組むべきだ。
 併せて温暖化防止に国が本腰を入れなければ、国民の健康は脅かされ続け、それは年々深刻化することを肝に銘じたい。