<社説>無料塾補助半減 貧困で教育の機会奪うな


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 県内11市町で実施されている生活保護世帯の児童・生徒への無料塾という学習支援事業が来年度以降は事業縮小もしくは実施できなくなる懸念が出ている。国の制度変更で補助率が全額補助から2分の1補助に引き下げられるためだ。2011年度に始まったこの事業が県内で広がり、着実に効果を上げている。貧困の連鎖を断つためにも、国の補助減額で事業が頓挫する事態は避けなければならない。

 無料塾に通う小中学生は今年6月現在、238人おり、県内の生活保護世帯の全児童生徒2400人の約1割を占める。支援を実施している11市町のうち7市町は支援を受けた生徒の高校進学率が100%に達している。この事業が効果を上げていることの証しだ。
 事業はこれまで名護市を除いては国の「緊急雇用創出事業臨時特例基金」を利用して実施してきた。この制度が本年度で終了し、来年度からは「生活困窮者支援法」の枠組みに引き継がれる。対象が生活保護世帯だけでなく、生活困窮者世帯にも広げられる。支援範囲が拡大することは喜ばしい。問題なのは国の補助額が全額から2分の1に減額されることだ。なぜ減額する必要があるのか。
 昨年6月に成立した「子どもの貧困対策推進法」は「子どもの将来が生まれ育った環境によって左右されることのない社会」を実現することが目的だ。国と地方自治体が協力し、そのための対策を実施する責任があることを明確にしている。国の補助減額は推進法が定めた趣旨に反していないか。減額方針の再考を求めたい。
 本年度まで国が全額補助していたにもかかわらず、県内の30市町村が無料塾の事業自体を実施していなかったことは驚きだ。住む場所によって対象児童生徒の学ぶ機会を奪うことがあってはならない。全市町村が参加して一律に学習支援を享受できるようにしたい。
 県は本年度から経済的理由で塾に通えない大学進学志望の高校生を対象にした無料塾を始めた。事業費は沖縄振興交付金(一括交付金)を活用している。国が補助を減額する小中学生の制度でも、県が減額分を一括交付金で補填(ほてん)することはできないか。知恵を出してもらいたい。
 「貧困の連鎖」で子どもたちの教育を受ける機会を奪うことは許されない。平等な教育を保障するためにも事業を継続させたい。