<社説>クロマグロ規制 漁業国としての責任果たせ


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 すしネタとして人気の高いクロマグロの資源管理に取り組む中西部太平洋まぐろ類委員会の小委員会が、日本が提案した30キロ未満の未成魚の漁獲量を2015年から半減することで大筋合意した。

 資源回復に向けた第一歩として評価できるが、資源の減少は深刻だ。合意を実効あるものにして、一層の規制に取り組む必要がある。
 資源枯渇を如実に示す数字がある。日米などの科学者らでつくる北太平洋まぐろ類国際科学委員会によると、12年の太平洋の親魚の量は漁業が始まる前の6%未満と過去最低レベルという。商業規模の漁業による乱獲で、わずか数十年で9割以上減った計算になる。
 規制は十分だろうか。現状は漁獲量の9割以上が未成魚といわれる。太平洋と並ぶ好漁場の東大西洋では、未成魚の捕獲は原則禁止されている。卵を産む前に捕獲すれば、生息数が増えないからだ。
 これが奏功して東大西洋では生息数が増え、13年の漁獲枠は10年ぶりに広がった。成功例に倣い、同様な取り組みを検討すべきだ。
 合意では他に、30キロ以上の親魚は02年から04年までの平均量より上回らないようにする。10年かけて平均的な資源量である4・3万トンまでに回復させるという。
 親魚は平均量を上回らないようにはするが、漁獲量制限には踏み込まなかった。未成魚を半減しても、親魚が乱獲されては資源回復は望めない。産卵時期・場所での漁の制限も必要だ。合意は罰則を伴わないが、違反した国にはペナルティーを科す必要もあろう。
 未成魚の主要漁獲国であるメキシコは中西部太平洋マグロ類委員会に非加盟だ。規制に反対するメキシコのマグロは、ほとんどが蓄養施設を経て日本へ輸出される。メキシコが同調しなければ、日本は輸入禁止も検討した方がいい。
 流通、消費する側の意識変革も欠かせない。クロマグロがここまで数を減らしたのは、日本の消費者の大量消費、それを支える流通側の薄利多売ビジネスという背景もある。食べる量を減らす、「メジマグロ」などの名で流通する未成魚を扱わないという選択があってもいい。
 クロマグロはワシントン条約でいつ全面禁輸されてもおかしくない状況にある。世界一の消費国として、「海の幸」の恩恵にあずかってきた漁業国として、日本は資源回復に責任を負っている。